「農民」記事データベース20040628-641-09

シリーズ地域農業振興へ 生きいき農業高校

農業の特性生かした取り組みで地域に根ざした学校づくり

開拓者精神の下で学ぶ兵庫県立氷上高校

 兵庫県立氷上高校は、県中東部、丹波と呼ばれる地域の春日町にあり、今年で創立五十六年目を迎えます。営農科、食品加工科、生活科の農業関連学科と商業科二クラスがあり、現在五百三十人の生徒が、創立当初からの校訓―「開拓者精神」のもと学んでいます。


 校門を入ると、「拓く人」の像が迎えてくれます。この「開拓者精神」を身を持って体得する場として、北海道と長野県での勤労体験実習があります。これは三十年にわたって続けられ、「子どもから大人への大きな架け橋」になっています。

 いま氷上高校では、特に地域に根ざした学校づくりを重視して進めています。主な取り組みをあげると、

 (1)学校農場を地元の幼稚園や小中学校、養護学校、福祉施設などに広く開放。夏野菜の苗や鉢植えの花の販売、特養ホームの入所者を招いたブドウ狩り、養護学校の生徒を招いた交流学習会など、年間三千人を超える人々を迎えています。五月二十五日には、近くの小学一、二年生七十七人と一緒にもち米の田植えを行いました(写真右〈写真はありません〉)。秋には小学生を招き、交流餅つき大会を予定しています。

 (2)飼育・搾乳している牛乳は、地元の「ひかみ牛乳」へ出荷しています。その乳質(体細胞数)は教員・生徒の熱心な管理により、〇三年度は県下で第一位になっています。地元の新聞にも大きく報道されました(写真〈写真はありません〉)。

 (3)卵の生産では、ケージ飼いではなく平飼いで、メスとオスをいっしょに飼っていて、エサには抗生物質などいっさい加えていません。だから産直で出荷する阪神地域の消費者にもたいへん喜ばれています。

 (4)飼料用稲「ホシアオバ」をブタやニワトリの堆肥だけで直播栽培して稲発酵粗飼料を作り、地域にさきがけて家畜に与える試験に取り組んでいます。生徒たちが作った稲発酵飼料は、従来の家畜飼料にひけをとらない、との成果を得ており、取り組んだ生徒は、「稲作農家と畜産農家が連携しながら、地域単位で国産飼料の自給率向上をめざす展望がみえてきた」、「自分たちのやっていることが地域に役立って、本当にうれしい」と述べています。

 (5)ダチョウを南アフリカから導入して、地域の新しい産業おこしの研究を進めています。

 (6)地域の人たちと一緒に、学校の施設を使って地元大豆からしょうゆやみそを作り、「地産地消」を進めています。

 (7)地域住民に開放して「ホームヘルパー二級」の養成講座を開き、希望する生徒と地域の人たちが資格取得に取り組んでいます。担当の先生は、生徒たちの農業実習体験が介護に役立っていると話していました。

 飼料用稲の栽培を指導している藤原和正先生は、「このような農業の特性を生かした様々な取り組みによって、地域からなくてはならない学校と言われるような学校づくりを教職員で支え合いながら進めている」と話しています。

(新聞「農民」2004.6.28付)
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2004年6月

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