「農民」記事データベース20040621-640-17

シリーズ地域農業振興へ 生きいき農業高校

地域の人々との体験交流で学んだ農・林業の大切さ

創立97周年迎える神奈川県立吉田島農林高校

 今年で創立九十七年目を迎える神奈川県立吉田島農林高校は、県西部の穀倉地帯・足柄平野のほぼ中央、開成町にあります。園芸科学科、環境土木科の専門学科と普通科が併置されている県内唯一の総合制高校で、校訓の「至誠・勤労」をモットーに地域とのかかわりをもち続けながら、体験による教育を実践してきました。


 広い演習林でヒノキ間伐作業

 特色ある教育活動のひとつに、高校生がスタッフとなって地元の小学校・中学校の児童・生徒を指導する学校間連携事業があります。一九九八年度から始まったこの事業の内容をいくつか紹介します。

 高校には、二十九ヘクタールもの広さを誇る演習林があります。この演習林で、地元の小学生・中学生が、環境土木科の高校生や県の職員、地元の林家にノコギリの使い方や伐採方法を教えてもらいながら、ヒノキの間伐を行い、この木材を運び出す作業を行っています。

 ヒノキの切り倒しに「ワー!」という歓声が上がり、ドーンというヒノキの倒れる音、そして拍手。参加した中学生は、「林を守るということは、そこにすむ動物だけでなく、人間も助けられているということを知り、この仕事の大切さを感じた」と話します。

 豆腐作り・果樹栽培にも挑戦

 また、食品加工部の高校生は、小中学校の児童・生徒と豆腐作りに挑戦。先生役の高校生は、ニガリの量や作業の手順など真剣な表情でのぞみます。ニガリを加えてできあがるのを待ちながら、小中学生はワクワクドキドキ、高校生はハラハラドキドキ。そして本物の味を体験する試食は、みんなの笑顔がいっぱいにあふれました。

 園芸科学科の高校生は、梨の収穫と果樹の糖度の測定方法を教えます。日常的にも、さつまいもやトウモロコシ、エダマメなどの定植からはじまって、草取り、土作り、収穫など毎月一回の交流学習が行われています。

 患者さんに好評の園芸療法

 また、もう一つの特色ある取り組みとして、県立足柄病院での園芸療法があります。これは、草花部の高校生が週一回病院を訪問して、リハビリの患者さんにヒマワリ・アサガオの種植えやチューリップの球根植え、葉牡丹の寄せ植えなどを指導。参加する患者さんは、園芸の楽しみとともに、若い高校生との交流を心待ちにしているそうです。病院では、この園芸療法をさらに積極的に取り組もうと計画しています。

 こうした取り組みを通じて、高校生の中には、小さな子や高齢者への思いやりや優しさ、リーダーシップが育まれています。「小中学生の真剣な質問やまなざしにこたえる生徒の一生懸命な姿が印象的」と言う園芸科学科の岡安英治先生は、「農業高校は不思議な力をもっています。農業の持つ農の力と教育力がうまく合致して、パワーを発揮しています。こうした事業を大切にしていきたい」と、話しています。

(新聞「農民」2004.6.21付)
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2004年6月

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