演劇新国立劇場「請願―静かな叫び」愛のかたちの不可思議を描く
新国立劇場はイギリスの劇作家ブライアン・クラークの「請願―静かな叫び」を上演します。 この作品は、人生のたそがれ時を迎え、妻の死を目前にした夫と、死の覚悟ゆえ今を誠実に生きようする妻という老夫婦の葛藤(かっとう)、夫婦という愛のかたちの不可思議さを描くとともに、原爆が人類に対する犯罪であるという真実と、決して原爆が使用されないように監視しなければならないという作者の訴えがこめられています。日本では初演。翻訳の吉原豊司さんは一九八六年にロンドンの舞台を観て「芝居の醍醐味を堪能」したといいます。 ロンドンの高級住宅街にある瀟洒(しょうしゃ)なアパート。イギリスの退役陸軍大将サー・エドムンド・ミルン(80歳)と、その病身の妻レディー・エリザベス・ミルン(72歳)は、退屈だが穏やかな日々を過ごしていました。ところが、ある日、エドムンドは五十年余連れ添ってきた妻が、新聞の核兵器先制使用反対の請願広告に署名したことを知り、がく然とします。軍人は死ぬまで軍人であり、国家と政府を支持するのが務めだと信じるエドムンドは、激しく妻をしかります。しかし、エリザベスは自分のとった行動は確固たる信念にもとづいたものであり、その正しさを主張します。 核軍縮や社会思想、夫婦の義務などを議論するなかで、妻の余命や過去の人生など、抑圧されてきたものが白日のもとにさらされていきます。 演出の木村光一さんは「老いは、美しく激しい。人生を身体いっぱいに呼吸してきた豊かな老夫婦だ。苦いが、ユーモアと機知にあふれた見事な大人の会話劇であり、わたしたち日本の劇界に大きく欠けているものがここにはたくさんあるのだ」といいます。 夫婦を演じるのは鈴木瑞穂と草笛光子の二人。重厚なせりふ劇、静かにして激しく生きる魅力的な夫婦、ベテランらしい円熟した演技が光ります。
(鈴木太郎)
*6月22日〜7月8日、東京・初台・新国立劇場小劇場。連絡先 電話03(5352)9999 (新聞「農民」2004.6.21付)
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[2004年6月]
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