「農民」記事データベース20040621-640-01

手づくりしょうゆ交流会

岩手県農民連 女性部

本物のしょうゆっておいしいんだねぇ

作って 味見 感激 感動

 「本物のしょうゆってこんなにおいしかったんだ!」「昔の人の知恵ってスゴイ!」――岩手県農民連の女性部の主催で、五月二十九・三十日、「手づくりしょうゆ交流会」が岩手県大東町で開かれました。参加者は県内をはじめ東北・関東近県からのべ約百人。しょうゆ作り、山菜づくしの郷土料理、岩手女性部の心温まる歓待と、感動につぐ感動の二日間でした。


先人たちの知恵や技術

“スゴイ” 「目からウロコ」

 しょうゆ作りの会場、大東産直センターは、若葉が萌(も)える山あいの集落にあります。ビニールハウスには、しょうゆ作りの先生で同センター事務局長の伊東庚子さんや、地元の方々が三日前から準備したしょうゆこうじが一面に広げられ、美しいあさぎ色のこうじの花を咲かせています。

 開会あいさつと工程説明の後、さっそく大豆を煮る作業と、小麦を煎(い)る作業に取りかかりました。大豆を煮る担当は、みそづくり名人の小野寺みや子さん。大鍋を囲んで「水加減は?」など熱心な質問が飛び交います。「ゆっくり煮るのが大切なの。国産大豆はふっくら煮えるけど、輸入大豆は油がギラギラ浮くのよ」と小野寺さん。煮え具合は豆を親指と小指で挟んで簡単につぶれるくらいまで、というのが先人の知恵だそう。

 小麦煎り担当は橋本秀子さんと千葉ふみさん。掃き出し口のついたぶ厚い鉄製のホウロクを使って、弱火でじっくり煎ります。参加者も交代でやってみるのですが、とにかく根気のいる作業。「一人じゃイヤになっちゃうけど、みんなでやればおしゃべりもはずむねぇ。だから昔はしょうゆの仕込みは共同作業だったんだねぇ」。

 そうこうしているうちに、しょうゆ搾りが始まりました。伊東さんが「しょうゆ作りの全工程を通じて、もっとも大切なのは温度の調節です。最後の火入れは八十五度以上で酵母菌が死滅してしまうので、八十四度で三十分します」と強調しながら、三年前に仕込んだもろみを、絶妙な火加減で加熱していきます。

 すると、すかさず「温度計のない昔はどうやったの?」と質問が。伊東さんが「私も毎年作っているうちに、今では色と状態を見て、温度計がなくてもほぼできるようになりました。昔の人も経験を積んだのでは」と答えると、「スゴーイ。技術を継承するってこういうことなのねぇ」との声が起こりました。

 そしてさっそく皆で二年熟成、三年熟成の手作りしょうゆを味見。「うわぁ、おいし〜い」「三年ものの方がまろやかでおいしいね」「しょうゆって生きてるんだね」と一同、大感激。キッコーマンの特選しょうゆも味見してみましたが、「クサイ」「いつも食べてるはずなのに、こんなに違うとは思わなかった」とその違いに愕然(がくぜん)としたのでした。

 温度調整するヌルデの若葉

 二日目は、裏山からヌルデの小枝をとって来る作業からスタート。ところが「雨上がりで暖かい今日のような日は、マムシが出ますから気をつけてください」との注意が…。なんとか無事ヌルデを入手し、一日目の大豆と小麦に種こうじを混ぜ、カゴに広げてヌルデで覆い、ムシロで保温。「ヌルデの若葉は、こうじ菌がもっとも活発に働く季節の目安になると同時に、発酵熱を吸収して温度調節をしてくれる」と伊東さんが言うと、一関から参加した女性から「私の地域では、水枕のかわりにした」という話も飛び出し、先人の知恵に一同はまたまた感激。さらにもろみを仕込んで、全作業が無事終了しました。


郷土の食文化・技術を継承したい思い届いた

 自分たちで育てた大豆と小麦で本物のしょうゆを作りたい、岩手の雑穀文化を後世に伝えたいと、岩手の女性部がしょうゆ作りを始めたのは、四年前。しょうゆ作りの経験をもつ高齢者から、なんとかその技術を継承しようと、伊東さんが聞き歩いて作ってみたのが始まりでした。

 岩手女性部では、このしょうゆ交流会のために全体で三回、事務局は他に四回も集まって準備してきました。「ポスターを見た」「直売所で誘われた」「集落ビジョン対策でしょうゆ作りを始めた」など、農民連の会員以外の参加者が多かったのも今回の特徴。そして参加者も皆、いたって熱心。郷土の食文化を作り伝えたいという岩手女性部の熱い思いが、まっすぐに届いた交流会でした。


すごく勉強になりました

青森県斉藤さん

 最年少参加者の斉藤美緒さん(26・青森県)の感想 忙しい時期に交流会を開いてくれた岩手の女性部の皆さん、地元の方々に感謝です。

 しょうゆって2〜3年たたないとおいしくならなくて、まさに「スローフード」だなと思いました。また昔の人の生き方を知るうえで、ものすごく勉強になりました。昔ながらの知恵と技術には「目からウロコ」だったし、こうじ菌が持つパワーにふれて自然の不思議に感動。なんとしてもこの知恵と技術は継承していかなきゃいけないとしみじみ思いました。


山菜・海の幸も好評!

 参加者を感激させたもう一つは、花巻の女性部が腕によりをかけた郷土食。摘んできたばかりの山菜、三陸の海の幸などがテーブルを埋めつくし、なかには塩漬けにした山菜など二年越しの料理も。「食の文化、豊かさをしみじみ感じる。スローフードに感動した」と、大好評でした。

(新聞「農民」2004.6.21付)
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2004年6月

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