国連でも採択された「食糧主権」の考え方 》下《ジグレール報告の画期的内容
国連の第六十回人権委員会に提出されたジグレール報告書は、食糧主権という考え方についても、「食糧に対する権利」との関連を深く分析し、位置付けを行っています。
貿易の利害を超えた優越性報告書は、国際的農民運動組織であるビア・カンペシーナ(農民の道)が、九六年の世界食糧サミットの際に初めて提案し、その後多くのNGOや市民組織によって論議され、深められてきた食糧主権に関する論議の経過を紹介し、「食糧主権の概念についてのアカデミックな研究や系統的文書はほとんどなく、むしろいま概念化されようとしている過程にある」としながら、現時点での定義を次のように紹介しています。「食糧主権とは、人々やコミュニティー、国が、自分たちの農業・食糧・土地などの政策を、社会的にも経済的にも文化的にも、それぞれの独特の条件にふさわしいものとして規定する権利である」。 報告書は、「この新しく浮かび上がった概念を検討し、理解することはいま不可避である」と認めています。 また、食糧主権が「貿易の利害関係を超えた優越性をもっている」という主張を支持し、「多様性のある生態学的生産システムにもとづく、小農・家族経営に基礎をおいた国内・ローカル市場のための食糧生産に最優先順位をおく」という主張にも同意して、「食糧安全保障に関する国家と個人の主権を回復すること」の重要性を強調しています。 さらにジグレール報告書は、「輸出指向型の農業モデルの見直し」を求め、「貿易それ自体を目的とするのではなく、それを手段として扱う対策」として食糧主権を評価し、国際人権法上も、これを考慮するよう委員会に提言しています。
反対は、アメリカ一国のみこの報告を受けて人権委員会では討論が進められ、四月十六日に採決が行われました。その結果は、賛成五十一カ国、反対はアメリカ一国だけ、棄権はオーストラリアのみと圧倒的多数で採択されました。日本政府もこの報告に賛成票を投じており、注目されます。(山本博史) (おわり)
(新聞「農民」2004.6.7付)
|
[2004年6月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2004, 農民運動全国連合会