「農民」記事データベース20040531-637-11

演劇

文学座「パレードを待ちながら」

『銃後』の女性 心に残る舞台に


 今年は「カナダと日本の外交関係75周年」という記念の年。その記念すべき年に文学座はカナダ現代演劇をリードする劇作家ジョン・マレルの代表作「パレードを待ちながら」(訳・吉原豊司)を上演します。

 舞台は第二次大戦末期のカナダ・カルガリー。登場人物は五人の女性。国防婦人会のリーダーであるジャネットは口うるさいが大の世話好き。未亡人のマーガレットは息子に出ていかれて落ち込んでいる。夫が出征していても自分の好きなように生きるキャサリン。年の離れた夫とうまくいかない教師のイーヴ。ドイツ移民で父親が収容所に送られてしまった仕立屋のマルタ。ある日、マルタが迫害を受けてキャサリンの家に転がりこんできたことから、五人は奇妙な友情でつながっていきます。

 『銃後』を生きぬき、「待つ」女性たちは…。重いテーマのなかに、スイングミュージックやカナダの素朴な民謡や踊りなどが随所にちりばめられて、笑って、泣いて、いつまでも心に残る愛しい舞台になっています。

 出演は藤堂陽子、つかもと景子、征矢かおる、郡山冬果、三浦純子。

 演出は鵜山仁。「第11回読売演劇大賞グランプリ・最優秀演出家賞」を受賞したばかりの今もっとも注目される演出家です。今回の作品について、鵜山さんは「日本にはかつて『銃後』という言葉がありました。日本だけでなく『敵国』アメリカにも、そしてドイツや中国にも『銃後』を生きる女性たちがいた。では冬季オリンピックの町カナダ・カルガリーに果たして『銃後』はあったのか?

 当然あった。しかし、それが当然だという理性とその当然にハッとする情緒との隔たりの間にこの地球上のあらゆる国に生きる人間の相互理解の可能性と困難が見えてくるような気がする」といいます。

 カナダの作品上演が最近は目立って多くなってきています。カナダ演劇に詳しい演出家の貝山武久さんは「カナダ戯曲の魅力の一つは、海の彼方から日本を見る、視点の新鮮さ」(「文学座通信」)と指摘しています。この作品もいくつかの劇団で上演されてきましたが、文学座の舞台も新たな感動をうみだすことと期待されています。

(鈴木太郎)

 *6月4日〜13日、東京・新宿・紀伊国屋ホール。連絡先=電話03(3351)7265

(新聞「農民」2004.5.31付)
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2004年5月

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