国連でも採択された「食糧主権」の考え方 》上《ジグレール報告の画期的内容国連は、四月の人権委員会で、「食糧主権」が、重要な人権としての「食糧に対する権利」や食糧安全保障と密接な関連をもっていると確認する報告書を採択。この採決に日本政府も賛成したことが明らかになり、注目されます。
国連は、三月十五日から四月二十三日まで、ジュネーブで第六十回人権委員会を開催し、「食糧に対する権利」を重要議案の一つとしてとりあげました。 この「食糧に対する権利」は、世界人権宣言にもとづく経済的・社会的・文化的権利の重要な柱として、食糧安全保障とともに、国連が推進してきたものです。九六年に開かれた世界食糧サミットの「ローマ宣言」では、二〇一五年までに栄養不足人口を半減することを 公約したにもかかわらず、実際には栄養不足人口は八億人から八億四千万人に増加しており、こうした現状をふまえてとりあげられました。
栄養不足はスキャンダル国連人権委員会へのジャン・ジグレール特別報告者のレポートは、「すでに全人口を食べさせるのに十分以上の食糧を生産しているのに、世界で八億四千万人を超える人びとが栄養不足に苦しんでいることはスキャンダルだ」と告発。さらに、WTOカンクン閣僚会議が決裂したことについて、「北の先進諸国の非協力的なダブルスタンダードの姿勢に原因がある。貧困者や発展途上国がみずからの食糧安全保障を確立するニーズに見合う農業合意に失敗したからだ」と分析しています。
消費者の利益にならないWTOまた、ジグレール報告は、多国籍企業が各種補助金に支えられて、高い消費者価格を維持しながら生産者価格を買いたたく力をもち、世界の食糧市場を支配しているために、消費者にとってもWTOが利益になっていないことを検証しています。七四年以来、農産物価格は全体として下落しているのに、消費者価格は上昇しているという世界銀行の調査を引用し、とくにコーヒーの世界価格が七五年から九三年までに一八%下がる一方で、この間にアメリカでは、消費者価格が二・四倍になっており、これは不公平貿易の結果であると示唆しています。
多国籍企業の責任を明らかにそして、こうした多国籍企業の力が悪用されないように規制・管理する責任システムがまだ存在していないと指摘し、多国籍企業が「食糧に対する権利」など人権義務を尊重するように、国際人権法にもとづく企業責任に関する義務基準を早急に規定することを求めています。(山本博史)
(つづく)
(新聞「農民」2004.5.31付)
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[2004年5月]
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