「農民」記事データベース20040531-637-03

「地域農業の守り手」

農業委の役割を低下

改悪農業委法を強行可決


 農業委員会法と農業改良助長法の改悪案が、五月十九日、参議院本会議で審議・採決され、日本共産党だけが反対、自民、公明の与党のほか、民主、社民も賛成して、可決しました。

 農業委員会法案では、必置基準面積を大幅に緩和、その結果、全国で二割近い市町村が農業委員会を設置しなくてもよくなってしまいます。また所掌事務から農業農村の振興が削られ、かわりに農地の利用集積・効率利用が加えられたり、委員定数が削減されるなど、「農民の議会」「地域農業の守り手」という農業委員会の役割を低下させる内容です。

 改良助長法の改悪は、普及センターの必置規制をなくし、中身も構造改革路線にそって法人などの育成をはかるものです。

 農民連は、これまでも両改悪案に強く反対。十一日と十八日には大阪、東京、神奈川、三重、福島などの代表が、農水委員会の全議員への要請と国会傍聴を行いました。

 議員要請では「東京都民の九四%が農業・農地を守ることを希望しており、農業委員の増加を求めている」「農地は産廃に狙われている。守るのは農業委員会しかない」「農業振興に必死で取り組んでいる農業委員のリストラは許せない」「普及センターは今でも人が少なくてたいへん。普及員の削減は地域の農業にとってたいへんなことになる」などと要請。しかし採決で反対を貫いたのは日本共産党のみで、自民、公明、民主、社民の各党は討論らしい討論もせず、審議を打ち切って強行採決しました。

 両法案と同時に「青年等就農促進法」の改正案が、全会一致で可決されました。


水田助成を415億円削減

 日本共産党の紙智子参院議員は、農水省の資料をもとに、米政策改革で今年度から導入される産地づくり対策交付金が、これまでの転作助成金より四百十五億円(二二%減)も削減されることを明らかにしました。(表)

産地づくり対策交付金と水田農業経営確率対策額(2003年度)との比較
 
削減率
削減額
全国計
▲22.3%
414億8100万円
北海道
▲23.1%
115億9765万円
青 森
▲21.2%
15億5299万円

岩 手

▲21.1%
14億7988万円
宮 城
▲24.0%
21億712万円 
秋 田

▲19.2%

14億8775万円
山 形
▲21.3%
14億1092万円
福 島
▲7.4%
2億592万円
茨 城
▲21.4%
12億8639万円
栃 木
▲23.1%
14億1092万円
群 馬
▲10.5%
1億1204万円
埼 玉
▲6.0%

7694万円

千 葉
▲10.6%
7442万円

東 京

▲100%

400万円

神奈川
▲17.7%
460万円
山 梨
▲13.3%
2159万円

長 野

▲25.8%

7億675万円
静 岡
▲17.3%
1億4798万円
新 潟
▲20.6%
14億2292万円
富 山
▲22.7%
10億9061万円

石 川

▲21.2%

3億4543万円

福 井
▲25.5%
7億5841万円
岐 阜

▲27.0%

8億9621万円
愛 知
▲27.8%
11億3198万円
三 重
▲22.1%
8億4712万円

滋 賀

▲29.1%

14億9443万円

京 都

▲20.1%

1億5244万円
大 阪
▲8.2%
1079万円
兵 庫
▲21.3%
6億9587万円
奈 良
▲7.0%
1397万円
和歌山

+550万円
鳥 取
▲26.0%
3億3047万円
島 根
▲21.0%
2億813万円
岡 山
▲7.5%
1億1714万円
広 島
▲14.1%
1億4879万円
山 口
▲19.4%
2億3319万円
徳 島
▲5.5%
1798万円
香 川

▲7.7%

5736万円
愛 媛
▲16.0%
1億3387万円
高 知
+3864万円
福 岡
▲28.6%
19億282万円
佐 賀
▲29.4%
15億9416万円
長 崎
▲17.2%
1億7405万円
熊 本
▲22.9%

12億4505万円

大 分
▲25.7%
6億8446万円
宮 崎
▲21.1%
8億4375万円
鹿児島
▲22.7%
7億1579万円
沖 縄

+192万円

注、ともに交付予定額、農水省提出の資料より作成

 追及した紙智子議員に聞く

 これをもとに、農水委員会で政府を追及した紙議員に話を聞きました。

 農水省は、JA全中など農業団体に、「現行水準を確保した」などと説明していましたが、資料からも明らかなように、とんでもありません。地域経済にもかなりの影響がでることは必至です。

 都道府県別にみれば、北海道が約百十六億円の削減、続いて宮城県の二十一億円、栃木県、福岡県の二十億円と続きます。さらに農家レベルでみれば、私が聞いただけでも、北海道・妹背牛町では、一戸あたり二百十万円だった助成金が三割減。当別町では、十アールあたり六万八千円の助成金が三万八千円になり、三百万円(十ヘクタール)の減収。そしてこうした措置も対策期間の三年間がすぎたら今のところ継続の保障はありません。

 これでは、育てようとしている担い手まで、つぶれてしまいます。農業・農村の現状が瀕死の状態にあるなかで、農家の手取りを削減するようなことがあっていいのでしょうか。せめて現行水準の助成金確保が求められています。

(新聞「農民」2004.5.31付)
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2004年5月

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