「農民」記事データベース20040524-636-04

農協法「一部改正」案

ますます強まる中央集権

全中総会が全組合の基本方針を決定


 農業委員会制度の改悪とならんで、今国会には農協法の一部「改正」案が提案されています。

 経済事業改革がねらい

 一九九六年と二〇〇一年の二度にわたる「改正」では、「農協改革二法」と呼ばれ、経営管理委員会制度の導入や、「JAバンク自主ルール」の根拠となる農協信用事業の再編強化が主な目的でしたが、今回は、経済事業と共済事業の再編強化をねらっています。

 ここでは、経済事業について内容と問題点を整理してみます。

 全中が「基本方針」示す

 「改正」案では、全中が毎年の総会で、全国すべての農協の「組織・事業・経営の指導に関する基本方針」とその実施方法を定めることとなっています。これは、経済事業にとどまらず、全事業を含むものです。

 協同組合はもともと各単位組合が自主性をもっており、組織・事業・経営の基本的あり方は、それぞれの地域や組織の独自の条件を踏まえて、組合員主体で自主的に定めるべきものであることは言うまでもありません。

 ところが今回の「改正」案では、この組合員にゆだねられた基本的権利を全中が奪いとり、中央集権的にすべての組合の基本方針と実施方法を全国画一的に決めて押し付けることになります。いま全国で論議されている米改革と地域農業の「ビジョンづくり」がその典型です。これまで三年に一回開かれる全国農協大会でやっていた方法が、毎年の全中総会で実行されるのです。

 「改正」案では、各県の中央会にも、この「全中で定めた基本方針に即して組合指導を行うこと」を義務付けています。このほか、中央会の監査機能も全国的に集約することが示されています。

 販売先は自由選択制に

 販売事業では、ほかの農協の組合員の農産物も販売できることとされ、有利販売できる組合を選んで出荷することで、組合間格差の拡大を誘導することになります(公立学校での自由選択制と類似)。組合員の共同を強めて有利に販売するこれまでの共販から、農協役職員まかせの販売に大きく転換させられます。

 農家経営の赤字を放置して、農協だけ収支均衡ねらう

 同時に、経営情報の開示義務を強め、全農・経済連も部門別損益状況を総会に提出しなければなりません。

 いま農協の経済事業改革が進められており、その「改革指針」では、(1)物流・農機・SS・Aコープなど拠点型事業で、二〇〇五年度までに収支均衡を実現すること、(2)経済事業の部門損益を三年以内に収支均衡させること、(3)関連子会社についても三年以内に赤字解消をはかることなどが追求されています。

 WTO体制のもとで、政府の価格支持政策は全廃されようとしており、農家にとって採算のとれない状況が続いていますが、こうした前提条件をそのままにして、農協の経済事業だけ収支均衡を実現させるということは、農家・組合員のニーズ実現のための協同活動組織づくりとはまったく逆行する方向づけというべきです。

 今回の「改正」案は、昨秋の農協大会に続いて、財界が求める農協経済事業の解体をみずから促進する動きとみることができます。

(Y)

(新聞「農民」2004.5.24付)
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2004年5月

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