楽しく賢くがんばる千葉県北総農民センター女性部加工すればなんでも売り物になります原料はハネダシ物など
「丹精して育てたのだから、少しでも高く売りたい」というのは、農家みんなの願いです。千葉県北総農民センターの女性部では「加工すれば何でも売れる!」を合言葉に、楽しく、賢く、農産加工に取り組んでいます。北総農民センター職員の鵜澤栄子さんと一緒に、女性部加工部会長の香取芳乃さんの加工所(佐原市)を訪ねました。
たちまちに人気商品に加工所に着くなり「ちょっとこれ食べてみて」と出てきたのが、ピリ辛味が香ばしい南蛮味噌。「二月の全国連女性部の総会で、岩手の女性部が持ってきた南蛮味噌がとてもおいしくて、マネしてみたんだけど、どう?おいしい?」と香取さん。朝市や直売に並べたところ「お握りにもコンニャクにもぴったり」「クセになる味」とたちまち人気商品に。普及センターの勉強会に出たり、農民連女性部の行事に「おいしいものをスパイに行き」、良いと思ったらすぐに挑戦。「加工すると、楽しいよぉ。工夫すればなんでも売り物になって、お客さんに喜んでもらえるんだもの」と、熱っぽく語る香取さん。餅、おこわ、餅菓子などの米加工品、味噌、焼き肉のタレ、漬物……いったい何品目加工しているのか本人にもわからないそうです。 次に出てきたのが梨ジャムとゴボウの味噌漬け。春なのに梨? 「収穫期に皮をむいて、いちょう切りにして冷凍しておけば、一年中ジャムが作れるの」。梨は、食べるにはまったく支障なくても、小さな傷で規格外になり、捨てられてしまう物がたくさん出ます。香取さんはこのキズ梨を梨農家から格安で譲り受け、ジャム作りに生かしているのです。 梨に限らず、農業にはハネダシものが付きものです。これをなんとか商品にできないか――。ゴボウの味噌漬けは畑作の組合員宅から仕入れた折れゴボウを、特製の味噌床(作り方は秘密)で漬けてみたそうで、これまた絶品でした。 でも農家は農繁期は農作業が忙しくて、加工まで手がまわりません。「ならば畑作農家が忙しい時は稲作農家が、稲作農家が忙しい時は畑作農家が、ハネダシものの加工をやりくりできないかと、いま女性部で話し合っているんです」と鵜沢さんは言います。北総農民センターには稲作農家と畑作農家の両方がいるのも強み。
工夫を次々種明かし…作った加工品の売り先、農民連佐原支部が十五年前から開いている朝市や夕市、千葉県我孫子市の団地でやっている朝市などです。「楽しみに待っていてくれるなじみのお客さんが多いし、食べる人の顔が見えるから、いい加減なものは作れない」という思いが、安全でおいしいもの作りの原動力です。直売で人気を博すコツは、豊富な品ぞろえ。「前日に全部を加工したら大変だから、おかきとかジャムとかお味噌とか、保存がきくものを日頃から作っておく」のだそうです。そして「加工していてうれしいのは、すべてのものがむだにならないこと。のし餅が売れ残ってもおかきにできるし、ちょっと酸っぱくでき上がってしまった味噌も漬物の漬け床になるし」と工夫を次々種明かししてくれる香取さん。 値段付けは、使った材料費を積算して原価を出し、原価割れするような安値にはしないようにしていますが、香取さんがいちばん心掛けているのは「みんなが買いやすい値段にすること」です。
農産物すべてムダにならない工夫稲作農家が忙しいときは畑作の人が加工をやりくり近代化資金借り入れて加工に取り組むうえで大切なのが加工所ですが、香取さんの場合、プレハブ建て六畳の加工所が始まりでした。「あの時はああ、これで私の“城”ができたと思った。本当にうれしかった」と言う香取さん。その後、加工の品目が増え、加工での収入が農業経営の大きな柱になったのを励みに、三年前に味噌蔵、倉庫を合わせた広い加工所を、農業近代化資金を借り入れて新設しました。「でも高い車一台買ったと思えば、この加工所は一生使えるし、安いもの。資金を借りる時に一番大切なのは“今は赤字だけど、これから米をこれだけ作って、何に加工して、資金を返済します”という計画を農協や役場の窓口に納得してもらうこと」と香取さん。「だからなるべく減反なんかしないで、安全な原料をたくさん作っておかなきゃ、計画だってたてられないでしょ」と強調します。
待ち遠しいネット発足香取さんや加工に取り組む女性たちが、いまいちばん心待ちにしているのが、全国ふるさとネットの発足です。「加工していると、焼き肉のタレに使うニンニクとか、ジャムに使うレモンとか、どうしても自分たちの作物だけでは足りない原料があるの。そういう物も農民連の生産者からだっら安心して仕入れられるでしょ。どこに何があるのか、ぜひ紹介して」と期待がふくらんでいます。
わが家自慢の加工品紙上で交流しませんか募 集わが家自慢の加工品の作り方を、新聞「農民」で交流しませんか。ぜひ情報を編集部までお寄せください。地方独特の加工みそ、大人気のケーキやお菓子、わが家自慢の漬物、豆加工品、ジャムや果物の加工品、タケノコや山菜、さまざまな保存食や乾物……。品目はなんでもかまいません。 もし作り方がレシピの形に整っていなくても大丈夫。材料なども「だいたいこれくらい」という目分量でかまいません。編集部から追って聞き取り取材します。 日本の農家や農村には、自然の豊かさと暮らしの知恵が詰まった、おいしい食べ物がいっぱいあります。「朝市の人気商品なの」とか、「地域伝統の味よ」「簡単に作れてとっても便利」などなど、アイデアをおおいに交換しあいましょう。
(新聞「農民」2004.5.24付)
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[2004年5月]
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