「農民」記事データベース20040503-634-09

旬の味


 四月になって満開の梅に雪が降り、この分では桜は遅れるかと思ううち、雪が消えるとすぐ満開となった。畑にはチラホラ人がいて「暖かくなりやしたなぁ」というあいさつも半年ぶりだ▼畑や畦ぎわにいろんな雑草が伸び始めた。イヌフグリやハコベの間に「こんなに生えていたのか」と思うくらい採り残しのナズナがいま白い花盛り。よもぎも端午の節句の草餅に間に合いそうだ▼ほうきの草も芽吹く。秋、これを根ぎわから切って縄で紡錘型に縛っておく。片手で庭を掃ける。竹箒より庭を傷めない。生活の知恵▼厳冬を越した佐久独特の冬菜のおひたしを大口を開けて食べられるのもこの季節。味噌仕入れのときの甘酒も貧しい農村での春の楽しみだった▼春は雑草にも食べ物にも自然と農山村の息吹と豊かさを感じさせる。これらすべてにおばあちゃんが関わっている。「目とずれば春のちいさきいのちのうす明り」(栗林一石路)▼でも意外に農山村の若い世代で自然や食への価値観が薄れたり、忘れられていないだろうか。新学期に学校給食を思う。

(節)

(新聞「農民」2004.5.3付)
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2004年5月

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