食と農を守る国民的ネットワークの力で食糧自給率向上運動をいまこそ!みんなの力で「農民連ふるさとネットワーク」を立ち上げよう!2004年4月 農民連ふるさとネットワーク設立準備会今夏の「農民連ふるさとネットワーク」(仮称)立ち上げに向けて、農民運動全国連合会(農民連)と産直運動全国協議会(産直協)は、呼びかけ案を発表しました。全文を紹介します。
全国の仲間のみなさん。農民連と産直協は、この夏に「農民連ふるさとネットワーク」(仮称)を立ち上げます。 私たちは、政府の「構造改革」による農家つぶしと、食糧を利潤追求のビジネスチャンスにしようとする大企業に対し、食と農を守る国民的ネットワークの力で食糧自給率の向上をめざします。この役割を担うのが「農民連ふるさとネットワーク」です。全国の仲間の力でこの運動を成功させようではありませんか。
1 「農業構造改革」は農業と農民をリストラし、農業・食糧をビジネスチャンスにする大企業の戦略政府は、経営規模が小さい農家をガーデニングだとばかにして生産から締め出し、条件の悪い中山間地などの農業を切り捨て、価格保障制度の撤廃や補助金の削減、農地制度と農業委員会、農民の協同としての農協の役割の否定など、家族経営を支援するあらゆる仕組みを破壊しようとしています。日本農業は、戦後、一貫してアメリカの食糧戦略によって、破壊され続けてきました。そんな中でも、日本の農民は家族経営を基盤に、必死に生産し、自らの経営を守っています。今日の「米改革」をはじめとした「農業構造改革」は、家族経営を全面的に否定し、多数の農民を生産から排除するもので、まさに究極の農業つぶしです。 今、財界は露骨に農政に介入しています。WTO協定や二国間自由貿易協定(FTA)によって、工業製品の輸出拡大と引き換えに、農産物の総輸入自由化を促進し、家族農業を否定する攻撃や、農業に関わるあらゆる規制の全面的な撤廃などを政府に要求しています。 これは、多国籍企業化している日本の大企業が、途上国などに生産の拠点をさらに移し、開発輸入によってもうけることを狙うとともに、「二十一世紀の最大のビジネスチャンスは農業・食糧だ」とし、世界の食糧不足を当て込んで食糧を支配しようとする狙いによるものです。 昨年の米の不作では、一部の大手卸が資金力にものをいわせて米の入札市場を独占し、価格のつり上げや買い占めをはかり、街の米屋さんに米が届かない事態が生まれました。これらの企業は、主食に携わる企業としての社会的責任が厳しく問われています。 今、米をはじめ農産物を、一部の大手業者や商社の金もうけの道具にするのか、それとも、生産者の思いを消費者につなぐ中小業者とネットワークを広げて、日本の食と農を守っていくのかが問われています。
2 ますます高まる「安全・安心・信頼できる国内産を」「自給率向上を」の国民世論今、大企業の戦略に忠実な農政が展開されている一方で、国民世論はまったく別の流れにあります。危険な残留農薬や添加物、遺伝子組み換え食品など輸入農産物への不安、アメリカでのBSEや鳥インフルエンザの発生によって、外国に食糧を依存していていいのかという、新たな世論が広がっています。 こうした世論は、政府を揺り動かし、食品の流通を変えつつあります。輸入農産物から違法農薬などが検出されれば、ただちに輸入をストップできるように「食品衛生法」が改正されたり、「食品安全基本法」の制定なども、安全・安心を求める国民世論によってできたものです。 こうした世論を背景に「地産地消」が全国に広がっています。量販店でも中小のスーパーでも、生産者の顔の見える農畜産物が消費者の支持を得ています。 米の流通では、米屋さんが「対面販売」という量販店にない優位性をいかして、「生産者と産地の顔が見える安全な米」を販売して健闘しています。きびしい大手との競争のなかで、こうした米屋さんと提携して活路を見いだそうと奮闘している中小の米卸が存在していることも、底辺に消費者の要求があるからです。
3 広がる“もう一つの流れ”をくみつくす生産者の側のチャレンジを国民は、リストラによる賃下げや失業、年金や医療改悪、重税による負担増などで生活が追い詰められ、将来に対する不安を高めています。「安心できる国内産を」の願いを持っていても「一円でも安く」というのもまた、現実の姿です。中小流通業者にしても、長期にわたる消費不況と大企業の横暴のなかで、農業と同様、「おれ一代で終わり」という声もめずらしくなく、商店街の衰退もまた深刻です。病院給食にかかわっている人たちは「患者さんに安全な食材を」と思っても、医療制度改悪のなかで、仕入れコストをギリギリまで切り下げざるをえず、どう打開するか頭を痛めています。 大企業の攻撃をはね返し、「もう一つの流れ」を確実に前進させるためには、お互いの立場を理解しながら交流を深め、流通関係者が向き合っている地域住民や消費者の要求を基礎においた粘り強い努力が必要です。
4 全国ネットワークの役割は「農業構造改革」の名で農民を生産から締め出す攻撃は、自給率をますます低下させ、主食・米ですら不足させる事態を作り出すに違いありません。本来、国民と手を結んで、生産を広げ、自給率を向上させる中心的役割を果たすべき農協中央が、政府と一緒になって「農業構造改革」の土俵に入り、生産の担い手である多数の農民を農業から排除し、みずからの協同組合組織としての基盤を掘り崩しています。こうしたなかで、農民連が、「農家みんなが担い手」を高く掲げ、農家や自治体などとも協力し、地域の農民の生産要求を担う組織となること、数十万の会員を擁する組織に発展することが、今、切実に求められています。 あわせて、地域で生産した多様な農産物を、広範な国民に届けるルートを広げ、国民的な自給率向上運動にふみ出すときです。こうした運動を事業の側面からサポートし、この間の産直協の様々な活動を継承し、発展させることが「全国ふるさとネットワーク」の役割です。
5 全国ネットワークでどんなことができるか(1)農民連組織と産直組織が共同してもの作りと多様な販売ルートを切り開こう今もっとも求められていることは、農家をリストラする攻撃をはね返し、生産・流通・実務の蓄積のある産直組織と農民連組織が共同し、つくる人を増やす取り組みを実践的に広げること。共同の力による販売ルートについて大いに話し合い、開拓することです。
(2)米作りと「新婦人産直」「準産直米」の取り組みを、大いに広げよう米作り農家に今後の選択を迫る「米改革」のもとで、減反する人もしない人も、販売ルートを確保することが死活問題になっています。「米改革」を中止させ、生産が続けられる米政策の確立を要求する運動とともに、安全でおいしい米を届ける新婦人産直、中小の米流通業者と提携して消費者に届ける「準産直米」の取り組みを前進させます。
(3)「産地をつないだリレー出荷」など多様な流通を広げよう「手数料の自由化」など市場法改悪法案が国会に提出され、市場の大企業支配と形骸化がたくらまれています。市場に依存している八百屋や中小スーパー、地場産野菜の扱量を拡大するために頑張っている卸などと提携し、リレー出荷をはじめ、多様な流通を広げます。生協は「事業連合」による経営の合理化、全農の直販路線への対応など、生協産直をめぐる情勢は大きく変化しています。こうした中で、産地と結びついた産直を軸にした生協らしい方向を模索する動きもあります。これまでも産直協加入組織が共同して生協産直に対応する努力が行われてきましたが、今後、生協や生協組合員のニーズに対応するためには、生産の拡大とネットワークの機能を生かした対応が不可欠となっています。 またインショップや直売所、カタログ販売など、地域の条件を生かして地産地消のあらゆる取り組みを大いに広げます。日本列島三千キロの豊かな農産物をネットワークに乗せて全国へ届けます。
(4)多様な品目に対応できる部会を作ります全国ネットの中に米、じゃがいも、玉ねぎ、果樹、加工品など、主要作物ごとの部会を設置します。ブロックや県ネットと共同して学校給食や病院給食、製粉会社、加工業者などと提携して多様なルートを切り開きます。
(5)情報の発信と、実務のサポートをします各産地の栽培品目や、生産・流通に関わる情報を集約し、内外に発信していきます。税理士や弁護士、協同組合の専門家などの協力を得て、ブロックや県ネットなどの経営管理・経理などの実務をサポートします。また、様々な研修会や情報交換会も引き続き行います。
(6)低コストの物流の開拓全国ネットワークを活かして、運送業者や関係団体と協力し、低コストの物流を開拓します。農民連と産直協は、結成以来、「ものをつくってこそ農民」を合言葉に、一貫して生産を広げることを運動の柱としてきました。生産の危機が進行し、「農業構造改革」というまったく新しい事態のなかで、情勢に対応した役割の発揮が求められています。今、まさに私たちの出番です。この歴史的事業の成功に全力をあげましょう。
(新聞「農民」2004.5.3付)
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[2004年5月]
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