「農民」記事データベース20040503-634-01

国際シンポの外国ゲスト2人

日本の運動と食・農村を堪能

各地訪問

 食糧主権とWTOに関する国際シンポジウムに参加したニール・リッチーさんは8日、千葉・多古町旬の味産直センターを、ヘンリー・サラギさんは12〜13日に千葉・房総食料センターを訪問。さらに11日には、そろって農民連食品分析センターを見学しました。メキシコのビクトル・スアレスさんはあいにくトンボ帰りでしたが、リッチー、サラギ両氏の目に映った日本の運動と食、農村とは――。


多古町旬の味産直センター

産直運動に“すばらしい”連発

リッチーさん

 餅つき初体験 祭寿司に感心

 リッチーさんが訪問した多古町旬の味産直センターでは野菜ボックス詰めの真っ最中。「エクセレント」(すばらしい)を連発しながら見入るリッチーさんに感想を聞くと「アメリカにも野菜ボックスがあるが、こんなにシステマチックに、消費者と密接な関係を作り上げていることにたいへん驚いた。この取り組みをぜひアメリカの農民に紹介したい」と、心底感心した様子。

 リッチーさんの注文で養豚農家や牛肥育農家、野菜畑を次々に回り、築後百年の旧家に立ち寄ると、ここでも「エクセレント」を連発。

 センターの交流施設では餅つきを体験。初めてとは思えないつきっぷりで、草もちがつきあがると、さっそく試食。安倍川もちがことのほか気に入った様子でした。さらに祭寿司の切り口から桜の模様があらわれると、あわててカメラをかまえ「これは芸術だ」と感心することしきりでした。

 また、シンポジウム一日目に、全国一律最低賃金制の確立を軸に、農民と労働者、中小業者などの国民的連帯を訴えた全労連全国一般東京地本副委員長の梶哲弘さんの発言にも敏感に反応。「アメリカでも労働者と農民の共同は切実な課題。あなたの発言をアメリカに持ち帰り、具体化したい」と質問攻めにしていました。

千葉・房総食料センター

農機具に興味、無料の提供も

サラギさん

 日本の農民は過保護なんて

 サラギさんは、三十五年前に九人の青年たちが始めた房総食料センターの生い立ちや、五十種を超える野菜の作付体系、消費者との交流の説明に聞き入り、経営・組織の状態について熱心に質問。

 訪れた農協の出荷場が「ウルグアイ・ラウンド対策費」で建設されたこと、過剰な選別で農家泣かせの施設であることを聞いたサラギさん、「インドネシアで、日本の農民は過保護だと聞かされてきたが、とんでもない。こういう金の使い方をするくらいなら価格保障に使うべきだ」とバッサリ。

 夜は組合員たちと農民としての生き方やインドネシアの歴史のことなどを熱く語り合いました。

 サラギ氏がとくに興味を示したのは農機具。農機具屋さんを二軒も訪問し、もみすり機や小型トラクター、草刈機をしげしげと見て回りました。

 インドネシアでは、もみすり機や精米機を地主が独占しているため、農民は小作料をとられたうえ精米料として一割もとられているといいます。また、有機栽培で米を作っても混ぜられてしまうので、インドネシア農民組合連合は自前の機械を持ち、自分たちで販売するプロジェクトを検討しているとのこと。

 あまりに熱心なサラギさんをみて、同センター顧問の越川洋一さんが知り合いの農機具屋さんに問い合わせたところ、旧型だがしっかりした構造のもみすり機を無料で提供してくれることに。センターでは、精米機や小型トラクターも送れないかと相談することになり、新たな国際連帯の輪が広がりそうです。


“政府も動かした”分析センター

農民連の施設にびっくり

 小さなセンター十分な機能

 分析センターでは、説明する石黒所長に対し、「サンプルはどこから?」「輸入食品からは、どんな種類の農薬が検出されるのか?」「分析費用はどれくらい?」と矢継ぎ早に質問が飛び出しました。

 石黒さんが「農薬を検出した輸入食品はマスコミにも公表し、現実に行政を動かしている」と説明すると、ニールさんは「政府を動かすほどの力があるのには驚いた」と言い、さらに「アメリカ産の農産物から農薬が検出されたら知らせてほしい。使用をやめるよう働きかけたい」と、日米の草の根の連携を提案。

 サラギさんは、組み換え遺伝子を分析する装置の前にインドネシア語の説明を書いた紙を置いて「証拠写真」を撮り「インドネシア政府は『予算がない』と言って分析装置の導入を拒んでいる。この写真を見せて、政府に導入を迫りたい」と意欲満々。

 さらに「農民組織が分析センターを持っているのには驚いた。小さいが、十分な機能を持っている。ビア・カンペシーナからの分析依頼にも応えてほしい」と要望していました。

*  *  *

 短い時間でしたが、国際シンポジウムと、その前後の交流を通じて、暖かく豊かな連帯がさらに育まれました。それはまた、私たちの運動の大局的な方向が世界の流れと一致していること、日本の運動と農村の少なからぬ部分が、世界に誇っていい価値を持っていることを示しているとも言えるでしょう。

(新聞「農民」2004.5.3付)
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2004年5月

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