キューバ紀行(2)
農業と教育を最重要とする国カリブ海に浮かぶ珊瑚礁の島を吹く風は、優しくさわやかで心地よかった。三月二十日。アメリカが国連不承認のまま行なったイラク攻撃から一年が経った日に、私はキューバの首都ハバナの地に立っていた。キューバは時がゆったりと流れ、人々が音楽や踊りを楽しむ楽天的な国柄で、人種差別が感じられず、子どもの目が輝いて見えた。ホームレスの姿も見かけなかった。よどんだ目にも逢わなかった。果物が豊富でおいしかった。 キューバは長い植民地時代があり、大きな犠牲をはらっている。キューバ革命のなかで、次世代のリーダーとなる人々が虐殺された残酷な歴史がある。サンチアゴ・デ・クーパにあるモンカダ兵営博物館は、そのことを伝えていた。 いまこの国は、農業と教育を国の最重要事項とし、食糧の自給率向上に努めている。(1)種子づくり(2)肥料づくり(3)栽培(科学者に収量の高い作物のリストを作らせた)(4)植物を守る方法(5)収穫を高めるプログラム(6)農産物を販売するプログラムなどが組織的に運営されている。その目的は、体によいものをキューバ国民のためにつくることだった。 勇気づけられたことは、(1)ソ連の崩壊で大打撃を受けたが、そこから学び農業の再生をはたしたこと、(2)石油に頼らなくとも仕事ができるようにしたこと、(3)カストロは一九五三年の革命に失敗して捕らえられ十五年の刑を受けたが、アムネスティ(世界中の人権侵害をなくすための国際的な市民運動)により解放されたこと。 アムネスティは、良心の囚人を支援している。署名や請願が世界中から毎日何千通も届くと、大きな圧力になるのだろう。署名は一人の男性を救った。その男性はキューバ危機もソ連崩壊もアメリカの経済封鎖もうけながら、この国を支え続けた。署名は誰にでもできる小さな行動。しかし、時には大きな力となることをキューバで見た思いがした。 (菊地 友子)
(新聞「農民」2004.4.19付)
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[2004年4月]
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