自由化推進、構造改革の加速ねらい「基本計画」見直しの動き急
利潤追求へ農政ゆがめる財界「食料・農業・農村基本計画」の見直しを検討している審議会企画部会は、一月末から五回の会合を開き、亀井善之農相が諮問した三課題((1)品目横断的な所得対策、(2)農業環境・資源確保対策、(3)担い手・農地制度の見直し)の審議が一巡しました。夏に中間の論点整理、年内に最終の論点整理を行い、来年三月には「基本計画」の変更を答申する予定。農産物の自由化を推進するFTA、「米改革」など農業の構造改革が加速するなかで、農政の根本をゆるがす策動が急です。
“自給率の数値目標かかげるな”と財界これまでの審議を通じてますます鮮明になってきたのは、財界が自らの利潤追求のために農政をゆがめようとしていること。農水省は企画部会に自給率の向上目標を先送りする提案をしましたが、これに呼応して経済同友会は三月、「食料自給率の数値目標を掲げるべきではない」などとする提言を公表(「農業の将来を切り拓く構造改革の加速」)。九割を超える国民の自給率向上への願いに、まっ向から反対する姿勢を明らかにしました。また、企画部会のなかでは、日本フードサービス協会の横川竟会長(すかいらーく最高顧問)が「食の『安心』という言葉は削っていただきたい。非常に不明確で伝わりにくい」などと発言。他の委員から「外食産業に携わる方が言う言葉かと驚いた。安心安全を否定して成り立つ産業なのか」とたしなめられる場面もありました。
一層の自由化と株式会社の参入自給率向上の目標を棚上げしたうえで財界がねらうのは、さらなる農産物の自由化と株式会社の農業への参入です。味の素の江頭邦雄社長は「私から見てFTAを推進するということが今、日本の国益にとって非常に大事」と、二月の企画部会で発言しました。これはFTAが、日本の輸出企業のために相手国の門戸を開かせるというねらいとともに、多国籍企業化した商社や食品企業にとっては、日本の自由化で新たなもうけ口が見つかるということ。 味の素は、これからFTA交渉が本格化する韓国、タイ、マレーシア、フィリピンをはじめ世界十四カ国に生産拠点をもつ食品多国籍企業。FTAで日本の輸入関税が撤廃されれば、開発輸入で利益が転がり込むと見越しているのです。 株式会社の参入問題では、首都圏に展開するスーパー「サミット」の最高顧問、安土敏氏(本名・荒井伸也)が、「株式会社は利益を追求するからダメだと言われるが、偏見をとりのぞく必要がある」と強弁。しかし「サミット」は、旧財閥の住友商事が一〇〇%出資する子会社で、安土氏も同社の出身。自治体の農政担当者などから「一般的には株式会社のほうが個人よりも強い。簡単に農地が売られる恐れがある」といった懸念が出されるのも当然です。
「食と農を守れ」の世論をさらにこの間の議論は、地域に根ざしている自治体や農協の関係者、食の安全を求める消費者などから批判が出されるものの、財界の意向を反映した農水省案が押し通される危険性が高いといわざるをえません。夏の参院選も視野に入れて、「日本の食と農を守れ」の世論を大きく盛り上げていくことが求められます。
(新聞「農民」2004.4.19付)
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[2004年4月]
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