兼業でやるには米作りしかない大切な田んぼをみんなで守ろう愛知・春日井市玉野 農用地利用改善組合里山を彩る桜が、春耕を待つ美田を見下ろします。名古屋駅から木曽路に向かうJR中央線で約三十分。濃尾平野の東端、愛知県春日井市玉野地区の住民は、都市化と農家の高齢化のなかで、力を合わせて田んぼを守るとりくみを進めています。
都市化、高齢化のなかで住民と農家が協力して大切な田んぼは玉野の宝です玉野地区の農地は二十七ヘクタール。三百五十戸のうち百十戸は農家ですが、専業は一人もいません。それでも田んぼはきれいに耕され、雑草が茂る放棄地がまったくないのは「玉野町農用地利用改善組合」があるから。「玉野の大切な自然である農地をみんなで守ろう」を合言葉に、三十人の「米つくりオペレーターグループ」が農家と協力して田んぼを守っています。「田んぼは玉野の宝。兼業で農地を守るには米づくりしかない」と力を込める川地隆正さん(59)=農民連会員、農業委員=。四年前まで組合長を務めていた川地さんがこう述べるには理由があります。
組合で農地の半分を請け負う「ふるさと農園」として市民にも開放麦・大豆作付組合として発足そもそも改善組合は十四年前、集団転作を担う組合として発足しました。農地を三つに分けて、一年ずつ麦・大豆を作付。しかし一巡した三年目に農家の不満が爆発します。麦・大豆はろくな収入にならず、転作奨励金も切り下げ、バブル経済の影響で農地はどんどん荒れ、「農政に協力すればするほど矛盾が深まる」という声が噴出しました。組合は解散寸前、「だけど荒れはじめた農地を誰が守るのか」――その葛藤(かっとう)のなかで川地さんは「田んぼを守るには米をつくるしかない」と訴え、転作組合は一転、“米づくり組合”へと変貌しました。 ところが今度は、農作業を担うオペレーターのなり手がいません。“ものを作らせない”農政が、農家の作る意欲を閉ざしてしまっていたのです。「きっかけは、サラリーマンの人たちの『私たちも農業をやりたい』『豊かな自然を守りたい』という声。これが農家にとって刺激になった」と、オペレーターの梶田恒光さん(63)。それからオペレーターが増えはじめ、今では農家の跡取りも積極的に関わっていると言います。
地元小学校の給食で食べさせたい市・農協も認め補助を検討中改善組合が請け負うのは、全農地の半分の十三ヘクタール。そのうち十ヘクタールは、オペレーターが草刈りや水管理もすべてやって、採れた米も自分で販売し、組合には機械利用料(十アール当たり二万二千円)を、地主には水利料と固定資産税相当を支払う仕組みです。また組合は四年前、条件の悪い農地を「ふるさと農園」(一区画三十坪)にして、市民への利用を呼びかけました。「近くの市民は『ゴルフも海外旅行もやってきたが、農作業が一番楽しい』という。市民とオペレーターが仲良くなり、相乗効果を生んでいる」と川地さん。今では百三十区画に増えた農園は、「土とのふれあいから、人とのふれあいへ」をキャッチフレーズにしています。 「農地をみんなで守る」を合言葉に米を作り続けてきた玉野のとりくみはようやく軌道に乗ってきました。市や農協も実績を認め、機械の更新費用の補助を検討しています。「効率や金もうけをめざす『米改革』の方向ではこうはならなかっただろう」と川地さん。「今後は小学校でクラス給食を実現して、玉野で採れた米を、玉野の子どもたちに食べさせたい」と前を見すえています。
(新聞「農民」2004.4.19付)
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[2004年4月]
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