遺伝子組み換え規制カルタヘナ法の問題点《3》塚平 広志
輸入大国日本では、港周辺に落ちこぼれた遺伝子組み換え作物が遺伝子汚染を拡大第二の問題点は、“食料、飼料、加工に利用する遺伝子組み換え生物(コモディティ)”の輸出入の扱いです。この点は輸出国アメリカなどの激しい反対で、栽培目的でなく、環境中に直接放出するものでないという理由から事前承認手続きの適用を除外され、移動の手続き、情報の通報、表示など詳しい実施ルールはまだこれから。二月末にマレーシアのクアラルンプールで開かれた第一回締約国会議で論議の焦点になりましたが、遺伝子組み換え輸入大国である日本にとって、どう決まるかは大きな問題です。さらに重大なのは、運搬過程で港の周辺などに遺伝子組み換え生物(ナタネの実など)が落ちこぼれ、野性種や栽培中の在来種と交雑し、遺伝子汚染を広げる可能性が現実化してきていることです。二月二十七日に農水省消費安全局長、農林水産技術会議事務局長、環境省自然環境局長の三者連名で出された「局長通知」では、この点を無視できず、リスク評価の対象とし、混入などの事実があれば回収命令の対象になるとしています。
「人の健康」からも安全審査や表示の抜本的見直しが必要第三の問題点は、議定書の目的でも重視している「人の健康に対する危険」の問題です。国内法では直接触れていませんが、環境省の「生物多様性影響の防止措置」の中では、危惧される影響として検討項目のなかに「ヒトへの非意図的暴露の可能性」や、「遺伝子の水平伝達・組換えによる新規微生物や予期しないウィルス出現の可能性」を挙げています。国会での法案審議のさいの答弁で厚生労働省も「予防的観点に立って健康を守るため適時、表示などの見直しを計っていく」としており、遺伝子組み換えの安全審査の方法、表示の抜本的な見直しが必要になってきています。また鳥インフルエンザが大流行し、感染症が大問題になっている時、危険なウィルスを発生させるような微生物組み換えは中止すべきです。 その他、遺伝子組み換え生物のリスク管理にトレーサビリティの導入や情報公開の方法など多くの問題点がありますが、私たちは「カルタヘナ議定書」の積極面を骨抜きにしようとする動きを厳しく監視し、関係省庁に条約の遵守と法の「的確な運用」を要求していくことが必要です。 (おわり)
(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン運営委員)
(新聞「農民」2004.4.12付)
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[2004年4月]
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