神奈川 供給センターの食材が人気安全な地元産を学校給食に3年間で横浜の小学校 1校から300校に子どもたちの何よりの楽しみ、学校給食。いま、横浜市の小学校給食に、地元、神奈川農畜産物供給センター(以下供給センター)の農畜産物が大きく広がっています。三年前、一校から始まり、三年間で三百校にまで広がった人気の秘密は――。
食農健と給食支部 30年のねばり強い運動味に敏感な子ども 残さずペロリ食材の良さ知った栄養士さん 口伝えで利用の道広げる生産者の便りに産直のよさが…「とにかくおいしいの。味が違うのよ。脂身だっておいしいし、豚骨だってぜんぜんちがうスープが取れるんです」と太鼓判を押すのは、肉類を中心に供給センターの食材を利用している日吉台小学校栄養士の鈴木圭子先生(四月から異動)。「味に一番敏感なのは子どもたちで、供給センターの食材だと、残飯が減るんです」。現在、供給センターでは、豚肉など肉類・肉加工品を中心に、果物、野菜、フライなどの水産加工品などを学校給食に供給。鈴木先生は産直の良さを「生産者が明らかで安全・安心なのはもちろん、大切なのは品物についてくる生産者のお手紙なんです」と言います。 供給センターでは、お便りの他にも栄養士や教師と協力して“育てている様子”が伝わるよう、生産者が授業に出向いて「先生」になったり、ソーセージ教室の開催などにも取り組んでいます。他にもニンジンを葉っぱごと届けたり、授業のなかでトウモロコシの皮むきをしたり……。「給食は教育の一環です。子どもたちは作っている人や様子がわかることで、食べられなかった物も食べられるようになるんです」と鈴木先生は言います。
調理実習会を自主的に開くなぜ、横浜では短期間に供給センターの食材利用がこんなに進んだのかそこには三十年にもおよぶ、横浜市従業員組合学校給食支部(以下給食支部)のねばり強い取り組みと、県内の労働組合、民主団体、農民連など三十三団体が加入する神奈川の食健連「食糧・農業と国民の健康を守る神奈川会議(食農健)」での連帯がありました。調理現場では、ともするとふぞろいだったり泥つきだったりする地場産農産物を使うことは手間がかかり、たいへんなことです。その困難を乗り越えられたのは、「あの人たちはおいしい給食を作ることに命をかけている」(鈴木先生)と言われるほど、ひたむきに「安全でおいしい給食作り」を求めてきた給食支部の姿勢がありました。 ビタミン剤使用をやめて生野菜を増やしたり、自主的に調理実習会を開いて研究を重ね、化学調味料をやめてダシ・スープをとるなども実現。「地場農産物を給食に、というのも二十年来の取り組みでした」と元支部長で立野小学校調理員の安部瑞枝さんは言います。 O157が全国的に発生した九六年以降、横浜市はすべての小学校を統一献立にし、食材も学校給食会による調達しか認めてきませんでした。しかし遺伝子組み換え食品の安全性が問われるなか、「安全な食品とは」をテーマに、市内十一カ所で食農健事務局長の藤代哲雄さんを招いて学習会を開催。また給食支部の組合員に市職員の栄養士さんが加わっていたことで、栄養面や安全面での学習と合意も深まっていきました。 そしていよいよ供給センターの食材を利用する学校が出始めると、栄養士の自主的学習会などでも「すごくおいしいよ」と評判が伝わり、評判が評判を呼んで三百校にまで広がったのです。
おいしいものを給食で使いたい供給センターの食材のすばらしさが知れ渡ったのは、食農健が二十年間、毎年開いてきた収穫祭が始まりでした。料理作りを給食支部が毎年担当し、「神奈川にはこんなにおいしいものがあるんだから、ぜひ給食で使いたいと、作っている皆が思ったのよ」と安部さんは言います。食農健は「横浜の学校給食を良くする会」や新婦人神奈川県本部など、地域の「お母さん」たちと、栄養士・調理員との日常的な結びつきの場にもなってきました。また食農健には横浜港で働く港湾労組や全税関の労働組合も加入。港見学など輸入食品の危険性を学ぶ取り組みもさかんで、農民連の農家での援農ボランティアなどを通して学んだことが、「安全な地場産を学校給食に」という運動の力となり、独自献立と供給センターの食材利用への道を開いたのでした。
畑から掘り出し急いで給食室に供給センター事務局の今森節夫さんは「学校給食への供給は、どんな小さなミスも許されず、実務にはとても気を使います。大根にスが入っているという知らせで、大急ぎで畑から掘り出し、給食室まで届けたことも」と苦労を振り返りながら、「子どもたちからの率直な声に、生産者も感動することがいっぱいで、本当にやりがいを感じます」と話しています。
(新聞「農民」2004.4.12付)
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[2004年4月]
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