保険料アップ、給付額カットますます憲法違反の年金大改悪国民そっちのけ 自動的に負担増大企業減税や海外派兵に予算をつぎ込む一方で、税金控除の廃止や消費税の免税点引き下げで国民に負担を強いる――小泉内閣は二月十日、国民の生活悪化、不安の広がりに追い討ちをかける年金「改正」案を国会に提出。国民に新たな負担を押し付けようとしています。
国会の決議を守り国庫負担を1/2にふやせ例みない大改悪保険料1・35倍この法案は、保険料の引き上げと高齢者への支払い額の引き下げを、国会の承認抜きで長期間、自動的に行うもの。年金制度は一九八五年以降、五年に一回改悪されてきましたが、自動的に負担が増える仕組みに改悪されるのは初めてで、まさに大改悪です。この大改悪により、保険料は〇五年四月から毎年引き上げられ、一七年までに一・三五倍にされます。農家や中小業者などが加入している国民年金の場合(図1〈図はありません〉)、一人あたり一カ月一万三千三百円の保険料が、一七年までに一万六千九百円に値上げ。月額二百八十円、年間では三千三百六十円ずつ負担が増えることになります。 小泉構造改革のもとで、失業者が増え、派遣労働やパートで働く労働者も激増し、今の保険料でさえ「払えない」「払わない」という人は一千万人を超えています。首相は「年金を永続的に持続させるには改正が必要」などと強調しますが、構造改革で保険料すら払えない雇用不安を生み出しているのは他でもない小泉首相です。この改悪法も、構造改革が進めば破綻する可能性があり、国民はさらに負担を強いられる危険があります。
今でも低い受給さらに15%削減受給についても、加入者の減少や平均寿命の伸び(高齢化)などを反映して給付を自動的に切り下げる、「マクロ経済スライド」という仕組みを盛り込んで、今でも低い年金の受給額をさらに一律一五%も削ろうとしています。国民年金の平均受給額四万六千円で試算した場合、二三年には三万九千百円まで毎年減らされます(図2〈図はありません〉)。しかし、これはあくまで平均の例。社会保険庁の調査でも国民年金の受給額が月二万円〜三万円台の人は四六%を占めますが、生活保護水準以下で国民年金だけが頼りのお年寄りも例外なく削られます。小泉首相の血も涙もないこの年金大改悪案は、憲法に保障された国民の生存権を脅かすものです。
年金法の目的に反する国の姿勢政府はこれまで「少子・高齢化で、お年寄りを支える人数は減っている」と、加入者だけでお年寄りを支えているかのように描いた「世代間扶養」という考え方を盛んに宣伝し、年金保険料の引き上げと給付削減を進めてきました。ところが、この考え方には国が責任を持ち、企業も負担して支える社会保障本来の理念が欠落しています。民間の保険と違って年金制度は公的なもので、憲法の理念に基づき「健全な国民生活の維持及び向上」(年金法第一条)をはかることを目的とし、国はその運用に大きな責任を負っています。にもかかわらず小泉首相は、国民年金(基礎年金)の国庫負担割合を、「〇四年までに二分の一に引き上げる」(現在三分の一)とした十年前の国会決議を破り、〇九年に先延ばししようとしています。
消費税増税しなくても年金財源は生み出せる財界要求に呼応自公に競う民主この年金大改悪をやめさせるうえで、国庫負担を公約どおり二分の一に引き上げさせることが最大の焦点です。また、十年間で二倍に膨らんだ総額百九十五兆円もの年金積立金を、直ちに計画的に取り崩すことが必要です。積立金は、年間の年金給付額の五・四年分もあり、イギリスの二カ月、ドイツ・フランスの一カ月と比べてケタはずれ。六兆円の損失を出している株式投資などでの浪費も中止すべきです。財源をめぐっては、日本経団連が、〇七年四月から消費税を一〇%に引き上げるよう迫っていますが、自・公与党は〇七年からの消費税の大増税をねらい、民主党も、年金目的の消費税増税を打ち出すなど、財界の増税要求に呼応しています。 そもそも消費税は法人税と違い、大企業は一円も負担しなくても済む最悪の大衆課税。導入後十五年間の消費税収入は百三十六兆円にのぼりますが、同じ時期に大企業からの税収(法人三税)は百三十一兆円も減っています(図3〈図はありません〉)。財界が言う消費税一〇%は大企業の税・保険料の軽減がねらいであり、消費税を増税しなくても、年金財源は生み出せるのです。 医療や年金などの社会保障の財源は、ムダな大型公共事業の見直しと軍事費の削減、大企業優遇の不公平税制の是正で生み出し、制度の安定と充実を進めることが必要です。消費税増税の攻撃を跳ね返し、年金を含めた社会保障の充実を求める幅広い共同の運動が求められています。
(新聞「農民」2004.4.5付)
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[2004年4月]
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