「農民」記事データベース20040329-629-07

本の紹介

暉峻衆三編『日本の農業150年』

広い視野による緻密な分析 私たちの運動を熱く励ます本


 「農業鎖国はもう続けられない」などという非歴史的なタワゴトをもとに進められる小泉「農業改革」。日本には農業も農民もいらないといわんばかりのイデオロギー攻撃に反撃するうえで、世界の大勢と歴史の教訓をしっかりつかむことが大切です。

 日本の「開国」(一八五〇年)から二〇〇〇年にいたる百五十年間の日本の農業・食糧、農民問題の推移を、資本主義の生成・展開と関連させながら系統的に紹介する『日本の農業一五〇年』は、こういう情勢にピッタリの本です。

 この本の編著者の暉峻衆三先生は、二〇〇〇年に開かれた「WTOに関する国際シンポジウム」に続いて、この四月に開かれる「WTO改定と食糧主権確立を求める国際シンポジウム」でもコーディネーターを務める「行動する碩学(大学者)」。

 現在進められている「米改革」、あるいは今後本格化しようとしている農地制度「改革」を歴史的に考えるうえで、本書から学ぶものは大きいといってよいでしょう。

 また、この本の大きな特徴は、一九八五〜二〇〇〇年の農業と経済の激動を解明したことです。暉峻先生は「農政のみならず経済政策全般にわたる新自由主義の嵐、WTO体制のもとで、日本の農業と食料安全保障がいかに危機を深めていったか……そして、この危機に対してNGOをはじめとする日本の市民層が国際的連帯のもとで危機打開をめざして対案を提起しつつ、各地で、また多様な仕方で運動を展開しつつある」と述べています。本書は、広い視野にもとづく緻密な分析に加えて、熱い励ましに満ちた本です。

(真)

 暉峻衆三編『日本の農業一五〇年 一八五〇〜二〇〇〇年』(有斐閣二〇〇三年十二月三十日出版、二千八百円+税)

(新聞「農民」2004.3.29付)
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2004年3月

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