遺伝子組み換え規制カルタヘナ法の問題点《1》塚平 広志
遺伝子組み換え生物の移動や使用が、生物多様性に悪影響を及ぼすことを防止するためのカルタヘナ議定書にもとづく国内法(以下「カルタヘナ法」)が、二月十九日から施行されました。 これは、地球的規模で環境破壊が進むなか、一九九二年にリオデジャネイロで開かれた「環境と開発に関する国連会議」で、地球温暖化防止条約とともにアメリカの反対を押し切って作られた「生物多様性条約」によるもの。同条約は、熱帯雨林破壊、 生態系破壊から自然を保護し、遺伝資源の持続可能な利用を目的にしています。 今回、施行された「カルタヘナ法」は、生物多様性条約のなかで、とくにバイオセーフティーに関する措置を締約国に求めたカルタヘナ議定書(以下「議定書」二〇〇〇年採択、日本も二〇〇三年三月批准、同九月発効)を、わが国で実施するために作られたものです。
議定書は消費者や途上国の要求に応えた積極的な国際的取り決め議定書は第一条の目的で、「環境及び開発に関するリオ宣言の原則15に規定する予防的な取組み方法に従い、生物多様性に悪影響を及ぼす可能性のある遺伝子組み換え生物の移送、取り扱いおよび利用には、人の健康に対する危険も考慮した十分な水準の保護を確保すること」と明記しています。そして第二条では、締約国に対して「議定書に基づく義務を履行するため、 必要かつ適正な法律上の措置をとる」 よう要求しています。 これはアメリカや多国籍企業による遺伝子組み換え生物の開発競争が激化し、輸出や利用の押し付けが世界的に強まるなか、規制を求める輸入国の消費者や途上国などの強い要求に、国際的に初めて応えた積極的な取り決めです。この議定書の義務を忠実に履行し、的確な実施をうたったわが国の「カルタヘナ法」も当然、消費者、生産者、国民のなかで高まっている食や健康への不安、環境破壊への怒りに応え、 規制を強化するものでなくてはなりません。
野放し状態だったGM移動に一定の縛りをかけた国内法法律の内容をみると、(1)遺伝子組み換え生物の第 I 種使用(環境中への拡散を防止しないで行う使用等)は、主務大臣の事前承認を受けなければならない。承認申請には、生物多様性影響評価書の添付が必要、(2)生物多様性影響が生ずるおそれがある遺伝子組み換え生物を輸入する場合は、そのつど、主務大臣へ届出義務。主務大臣は届出者に検査命令を出し、職員の立ち入り検査ができる、(3)生物多様性影響の評価などの情報を公表して、広く国民の意見を求める、(4)その他、主務大臣は緊急に必要な時、遺伝子組み換え生物の回収、使用中止などを実施、違反者への罰則規定も設けています。 これらの点は、今までなんの罰則もなく、名前だけのガイドラインで遺伝子組み換え生物の輸入、使用を事実上野放しにしてきたのに比べ、一定の縛りをかけた規制法であることは間違いありません。 ところが政府関係省庁(「カルタヘナ法」には環境、農水、経産、文科、厚労、財務の六省が関係。主務官庁は環境省)は、この法律の実施にあたって適用範囲をできるだけ狭く、小さくするよう「施行規則」「生物多様性影響評価実施要領」などを策定。遺伝子組み換え開発やその使用に支障をきたさない範囲で生態系保護をやっていこうという消極的姿勢をとっているところに大きな問題があります。 (遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン運営委員)
(新聞「農民」2004.3.29付)
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[2004年3月]
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