農と食と教育を考えるフォーラム全農研 関東地域
子の自立促し、感謝の気持ち学ぶ農家と交流、自給率など総合的学習全国農業教育研究会の関東地域研究会は二月二十八日、東京・中央区で「農と食と教育を考えるフォーラム」を開き、会員など約四十人が参加しました。フォーラムでは、二人の小学校の先生から農業体験学習が報告されました。ひとつは、東京都町田市立大蔵小学校の「学校の田んぼで親と取り組む子どもの自立を促す総合学習」。もうひとつは、私立和光小学校(東京)の「都会の子どもたちの農業体験がもたらすもの」です。
地域や保護者も大蔵小学校の五年生百十七人は、三人の先生の指導のもとに、地域の農家から二十アールの田んぼを貸してもらい、不耕起農法で米作りに取り組みました。不耕起農法とは、田おこしや代かきをしないで、堅い地面に稲の苗を植えていくやり方です。あぜを最低二十センチ高くして水をはり、元肥とワラを敷き詰めるとワラから藻が発生。ミジンコやゾウリムシが住みだし、田んぼの上をツバメが飛ぶようになりました。子どもたちは、田んぼを通じて自然循環も学んでいきます。そして地域の人たちや保護者も参加する米づくりになっていきました。 菅原聡先生は、こう強調しました。「一番の勉強は、感謝の気持ちを学んだことだったかもしれません。この自立をめざした取り組みは、百十七人プラス三人の『農民』を小学校から誕生させたのです」。 この田んぼからは、みごとに五百キロの収穫があり、一人に三キロが配られ、残りは学校給食でみんなで食べました。そしていま、この田んぼは四十アールに増えて、「地域の自然と田んぼを守る会」へと発展し、田植えには百人を超える地域の人たちが農作業をしています。
農家に宿泊して和光小学校では、静岡県中伊豆町の農家から田んぼを貸してもらい、米づくりと農家宿泊を通じて実感のある「学び」を作り出しました。米づくりを体験するだけでなく、農家との交流を通じて米の安全性や自給率、減反のことなど「米の総合学習」に取り組みました。
農が切り離されまたフォーラムでは、元奈良教育大学教授の元山玉雄さんが、「体験学習から考える―食農教育から食育の意味するもの」と題して報告。 この中で元山さんは、自民党がこの国会で成立させようとしている「食育基本法」について、「法律まで作って食生活を国民に指導しなければならない状況とは、なんだろうか」と疑問を投げかけ、「食農」という言葉は、食と農を両方向から考えるという響きがあるが、「食育」は農が切り離され、食だけが一人歩きする恐れがあるのではないか、と述べました。
(新聞「農民」2004.3.15付)
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[2004年3月]
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