「農民」記事データベース20040216-623-09

作物の成長がわが子を育てるように楽しい


 今年1月に県西農民組合に加入

   岡山・有漢町 岩原 トク さん(83) 


 今年から岡山県西農民組合に加入して、元気に野菜作りにとりくむ有漢町(うかんちょう)の岩原トクさん(83)にお話を聞きました。
(聞き書き 岡山県連 黒岡秀幸)


両耳が聞こえなくたって元気いっぱい野菜づくり

 上手に作りほめられて…

 岡山県中部の山間地に十八歳で嫁に来て、ずっと百姓をしています。主人を亡くして、過労が原因で両耳が聞こえなくなり、一級障害者です。息子は嫁や孫を連れて岡山市に出て行き、孫も一昨年、結婚しました。息子が「岡山に来て一緒に暮らせ」と言うのですが、町なかでは農作物が作れないので、私は行きません。

 十年ほど前、近所に住む岡山農民連の専従さんが「野菜を青空市に出したり、宅配ボックスに使うのでしっかり作って」と言ってくれ、週三回、岡山へ運んでくれました。ナス、キュウリ、トマト、ホウレン草、白菜、大根、ジャガイモ、タマネギ…。数は少ないですが、何でも上手に作るのでいつもほめられていました。

 困っていること2つある

 しかしその後、作物を運んでくれる人がいなくなり、しかたなく農協に出荷していましたが、等級が厳しく、数も少ないので、高く売ってくれません。となり部落の共産党議員の難波英夫さんに相談したところ、岡山県西農民組合に橋渡しをしてくださり、今年一月、会員になりました。私の作った物を取り扱ってくれることになり、これでまた農作物をつくる楽しみが出てきました。

 でも困っていることが二つあります。十年前は「虫が食っていてもいいから防除はせず、堆肥で作って」と言われたのに、県西農民組合の黒岡さんは「学校給食に使うので、虫食いや病気はだめだ。しっかり防除してきれいな物を出して」と言うのです。成長ざかりの子どもたちに、農薬のかかった野菜を食べさせるのかと思うと“大きな”胸が痛みます。

 もう一つは、私は耳が聞こえないので、やりとりはファクスでしています。でも出荷時間が急に変わった時など連絡がとれず、心配で困ってしまいます。そんな時は、難波議員にファクスを入れると、奥さんが黒岡さんに電話して、その様子を私に知らせてくれます。とてもありがたく思っています。

やめろという息子が週末に孫と一緒に手伝ってくれるよ

 安かったらがっかりし…

 息子は「近所の皆さんに迷惑ばかりかけるので、もう百姓をやめてくれ」と言いますが、私はやめません。農作物の成長が、わが子を育てるように楽しいのです。もっと楽しいのは、集荷に来た時、渡してくれる伝票とお金を見る時です。でも安かったらがっかりします。

 最後にもう一つ。ふだんは「やめろ、やめろ」と言う息子が、「手伝いに帰れ」とファクスを送ると、週末に孫たちと一緒に帰って来て、テイラーで耕したり、防除などをしてくれる時は、うれしいです。

(新聞「農民」2004.2.16付)
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2004年2月

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