タイ政府の隠ぺいで被害拡大鳥インフルエンザ国民から強い批判の声
昨年十一月からタイ国内各地で鶏の大量死が続発しており、政府は「家きんコレラ」としていましたが、感染者や死者が出るにおよんで、一月下旬になってようやく鳥インフルエンザと認めました。 最大輸出先の日本では、「家きんコレラ」や「ニューカッスル病」であれば、輸入制限は発生地から五十キロ圏内に限定されますが、「鳥インフルエンザ」では、発生国からの輸入が全面禁止になります。そのためにタイ政府は、発生以来二カ月にわたって病名を偽り続けたのではないかとの疑念がもたれています。 いずれにせよ、対策が大幅に遅れたせいで、鳥インフルエンザは二月二日現在、全国七十六県中三十五県に拡大、死者も十人に増えています。
商業大臣はCP関係者タイ政府の中枢、内外での農畜産物取引を担当する商業大臣には、昨年十一月から、タイで最大のアグリビジネス、CPグループの関係者(タニン会長の姻せき)が就任。その影響から政策がゆがめられたとも報道されています。 タクシン首相は、昨年のSARS発生時に続いて今回も、鶏肉や鶏卵を食べて死者が出れば、私財から三百万バーツ(九百万円)を補償すると公言。こうした人間の命にまで値段をつける発想に、強い反発が生まれています。
検疫緩和を日本に要求日本とタイのFTA交渉が、この二月中にも開始されようとしていますが、二〇〇二年の対日農産物輸出を見ると、第一位が鶏肉、二位が鶏肉調製品、三位がエビ調製品、四位がエビとなっています。そしてそのいずれも、最大の取り扱いをCPグループが握っています。 これまでの対日予備交渉の中で、タイ側が最も重視してきたのは、「労働市場の開放」と並んで「検疫の緩和」です。この要求は、今回の鳥インフルエンザ問題の経過から見ても、日本国民の食生活にさらに重大な問題を生み出すものと言わざるを得ません。 タクシン首相は、今年を「食品安全年」と名づけ、「世界の台所」をめざすキャンペーンを進めようとしていますが、それとは逆行する年明けとなっています。 (Y)
(新聞「農民」2004.2.16付)
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[2004年2月]
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