旬の味
信州佐久の一月は天も地も田畑も凍ってこたつにしがみつく季節だが、凍っているのではなく日々変化している▼信州でもここは寒いだけで雪は少ない。晴れる日が一週間も続くと軽鬆土(けいしょうど=軽い火山灰土)の畑は昼間融けて乾き、夜凍るというくり返しで日当たりの表面一センチ余りは乾いてサラサラする。だから稲刈り鎌でナズナの根を切って採ることができる。こういうチャンスを逃さず、午後早めに出かけるに限る▼二人で三十分も摘めば当分食べきれない。こたつにあたって新聞紙を広げてこしらえる(枯葉や根を切ってすぐゆでられるように整えること)。暗褐色の葉が熱湯に入れたとたんに鮮やかな緑色に変わるのを見るのがナズナ採りの一番の楽しみだ▼次の日、珍しく三〜五センチの雪が降った。雪が融けてもそれが凍るから当分摘めない。「ああ、昨日摘んでよかった」▼栗林一石路は「月光うごかず雪山のうごくすべなし」と詠んだが、森閑とした凍てつく真冬でも畑はやはり日々変化し息づいている。私の頭の中はもう春だ。 (節)
(新聞「農民」2004.2.9付)
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[2004年2月]
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