川辺川利水訴訟勝訴後の動き熊本県農民連人吉球磨支部 大石 一男
11月メドに「新利水計画」確定 農民の立場に立てるか注目「ダムの水はいらない」と立ち上がった農民二千人による川辺川利水訴訟が、福岡高等裁判所で劇的な逆転勝利をおさめた二〇〇三年は歴史的な年であり、判決は、農民不在の農政に「待った」をかけた瞬間でもありました。判決後、ダム本体着工に必要な漁業権の収用について審理している熊本県収用委員会は、「裁判で利水計画が取り消されても、ダムの利水目的は消失しない。審理は続ける」という判断を示しました。しかし、〇四年十一月をめどに進められている『新利水計画』の確定まで審理を中断することを決定。収用裁決は大幅に遅れることになりました。 一方、原告弁護団と国(農水省)、熊本県、関係市町村は『新利水計画』策定にあたり、ダムの利水を前提としないことで合意。説明義務のある行政は、事業の対象となる四千三百戸の農家一戸一戸に対して意向調査を行ってきましたが、川辺川ダムからの利水を望んだ農家はわずか四%に過ぎませんでした。 これは、大部分の地域で、農業に必要な水が十分に確保されていることを示していますが、今後、国と熊本県の巻き返しが予想されます。 今年一月には、複数の『新利水計画』の案と、農家の負担金が公表され、四月には、選ばれた一つの計画概要案が公告縦覧される見通しです。土地改良事業が、真の意味で、農民の立場にたったものとして実現できるかどうか、非常に注目されています。 この行方はダム建設のみならず、公共事業のあり方そのものに一石を投じることは言うまでもありません。厳しい農業情勢の中にあってこそ、私たちは全国の同志とともに連帯し、農民にひらかれた農政の実現に寄与していかなければならないと痛感しています。
(新聞「農民」2004.2.9付)
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[2004年2月]
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