新春の芸能探訪 東京浅草かいわいみる きく 笑う そして感動今なお下町に息づく大衆娯楽東京の下町・浅草。花のお江戸の時代から浅草寺を中心に、仲見世や歓楽街など常ににぎわってきました。映画館も遊園地(現在の花やしき)も日本で初めてオープンしたのがここ。この地で生まれた浅草オペラやレビューは大人気を得ていました。エノケンこと榎本健一や古川ロッパという喜劇役者が生まれ、伴淳三郎、益田喜頓、森川信、そして渥美清、萩本欽一、ビートたけし、などの芸人たちが誕生していったのです。今もなお大衆娯楽が息づいている浅草の芸能探訪を試みました。
「雷門」と書かれた大提灯がぶらさがる雷門(風雷神門)の前では、人力車を引く若者たちの客を呼ぶ威勢のいい声が響きます。雷門から仲見世をとおり本堂へ。千四百年近い歴史をもつ浅草寺のご本尊は観世音菩薩、観音さまは慈悲深い仏さまといわれています。 恒例となった新春浅草歌舞伎は浅草公会堂で二日に幕開け、二十六日まで、ほぼ昼夜二回公演。中村勘太郎・七之助の兄弟、中村獅童、市川亀治郎、市川男女蔵の若手人気俳優が顔を揃えます。演目は河竹黙阿弥の世話物「三人吉三巴白浪―大川端庚申塚の場」、歌舞伎十八番の内「毛抜」、「義経千本桜―吉野山」の三本。公会堂の路上には人気俳優や著名人の手形がはめこまれ、道ゆく人の目を引き付けています。 六区の通りに出ると、浅草演芸ホールがあります。落語家の名を染め抜いたのぼりが数多くはためいています。新春の初席(十日間)のうち元旦から五日までは午前九時から、六日からは午前十時から始まり、終わりは午後九時。小三治、円歌、円窓、小朝など百組近い出演者が登場します。演芸ホールと隣接する東洋館でも漫才やコントなどをみることができます。 日本で唯一の浪曲の定席が木馬亭。五重塔通りです。毎月一日から十日(午後一時開演)までが浪曲、ほかの日には演芸などのライブの会場になります。席亭の根岸京子さんが木戸(切符売り)に立ち、温かく迎えてくれます。新年も東家浦太郎や春日井梅鶯などが日替わりで登場、けれん味のある読み物が待っています。 元旦と二日に出演する芸歴七十年の東家三楽さんは、この秋、第十八回下町人間庶民文化賞を受賞。「浪曲も大衆演劇にしないといけません。節あり、笑いあり、涙あり、さらに三味線の音楽もある。日本人の心の琴線にふれる物語をきいてほしい」いいます。 大衆演劇も盛んです。木馬館は、全国をめぐる劇団にとっても、見る側にとっても伝統のある場所。初春公演は里見要次郎初春夢舞台で昼夜二回公演。浅草大勝館は、前身が洋画封切館。二年前から大衆演劇の専門劇場としてオープンし、全国座長大会などにも取り組んでいます。新春は橘大五郎一座です。三時間の熱演がみられます。 言問通りには雷5656会館。浅草のスター・浅香光代の新春特別公演(二日〜十五日)です。長谷川伸の名作「雪の渡り鳥」より「鯉名の銀平」とショー「春夏秋冬」。森陽子、深江章喜らの共演。 新劇の劇団として話題作を次々上演している演劇集団円の本拠地が田原町にあります。ステージ円は百席の小劇場。新春から、俳優たち自身の企画によるアンシャンテ公演が二本つづきます。 六日から十二日までは「冬のバイエル」。北海道で劇団をつくっている作家・斎藤歩の作品。内藤裕子が初演出で挑みます。冬の北海道のある町。ピアノを前に、人生の岐路を迎えた三家族の人生が交錯するという作品。出演は大竹周作、林真理花ほか。 十九日から二十五日までは「スティール・マグノリアス」。映画「マグノリアの花たち」の原作戯曲。アメリカのロバート・ハーリングの作品。翻訳台本は山本健翔、演出は大間知靖子。アメリカ南部の小さな美容院を舞台に、六人の女たちの人生が描かれていきます。出演は加藤美津子、池田道枝ほか。舞台と客席が一体になれる共有の空間もまた楽しみです。 (鈴木太郎)
*問い合わせ先=浅草歌舞伎=チケットホン松竹03(5565)6000/浅草演芸ホール03(3841)6545/木馬亭03(3844)6293/木馬館03(3842)0709/大勝館03(3843)6013/雷5656会館=浅香光代事務所03(3871)3434/演劇集団円03(5828)0654 (新聞「農民」2003.12.22付)
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[2003年12月]
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