「農民」記事データベース20031208-614-06

外米輸入 昨年の4倍も

外米のお雑煮で正月となりかねません

政府の政策放棄が原因


もち米不作 切り餅高値

 今年は、もち米の価格が高騰し、製品の切り餅も値上がりしています。一方、中国やアメリカから輸入する外国産もち米は昨年の四倍にふくれあがり、よくよく気をつけないと、外米のお雑煮で新年を迎えることになりかねません。

 なぜ、もち米が高騰しているのか? 原因は、政府が安定生産・安定供給に対する責任を完全に放棄しているからです。

 「胸を張って言えることではありませんが、もち米の生産量や需要量について、はっきりした数字はわかりません」。農水省の担当者は、取材にこう答えました。

 四十万トンあると言われるもち米の需要。その内訳は、全農などが集荷・販売する「自主流通もち米」が十五万トン、業者が農家から直接買いつける「計画外流通米」も同じく十五万トン、残りの十万トンは輸入米です。

 今年の国産もち米の不足は、価格の低迷によって作付面積が減ったため。そこに主産地の佐賀県と北海道が二年続けて不作になり、備蓄もまったくなかったため起こりました。

 「私は空知産直センターに出荷しているから何とか作り続けているけれど、普通の農家だったらとっくにやめているよ」というのは、北海道北村でもち米を作る橋詰久さん(60)。もち米は二年前まで値下がりを続け、一時は一俵(60キロ)一万二千円に暴落。「もち米は収量が低く、そのうえ、うるちの混入を避けるためコンバインや乾燥機をきれいに掃除しなければならないなど手間がかかる。うるち米と同じ価格ならもち米など作らない」と話します。

 全農は昨年と今年、十二万トンずつの「自主流通もち米」の集荷を計画。ところが集めることができたのは、昨年が九万四千トンで、今年は五万トン。銘柄ごとに一俵一万八千円から二万一千五百円に決まりましたが、実際には三〜四万円の値段で「計画外米」が流通しており、国産にこだわる街の米屋さんなどはもち米の確保に必死という状況です。

 生産費を大きく割り込んだ価格や、そこから一気に二倍以上に高騰するのでは、農家は安心して作れませんし、消費者や業者もたまったものではありません。

 その間隙をついて急増するもち米の輸入ルートは、もち米が七割を占める米粉調整品と加工用のミニマム・アクセス(MA)米、それにMA米の中で主食用のSBS米。昨年の同時期と比べて、米粉調整品は約一割増、MA米は二・五倍の二万四千トン、SBS米は四・四倍の三万五千トンにもふくれあがっています。(グラフ〈グラフはありません〉

 米流通を市場まかせ、民間まかせにして米価を暴落させ、米を作る農民と米屋さんを淘汰し、“足りなくなれば輸入すればよい”とばかりに米市場を輸入米に明け渡す「米改革」。もち米の現状は、その予行演習といわざるをえません。

(新聞「農民」2003.12.8付)
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2003年12月

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