餅 商店街で国内産・中国産食べ比べ安いからと中国産買う人も
「あなたはどちらが良いと思いますか?」――国産と中国産のもち米を食べ比べてもらおうという試みが、神奈川県横須賀市の黒船仲通り商店街の食品店「すず屋」店頭で行われました。「私はこっちが甘いと思うわ」とにぎやかな主婦、爪楊枝を手に沈思黙考する男性、「食べ物は国産でなきゃ」と“演説”するおばあちゃん景品も出るとあって食べ比べは大盛況でした。
“高くても国産食べる”今回食べ比べたのは、長野県上伊那農民組合の「白毛もち」と、〇二年産の中国産のもち米でついた白もち。餅つきには神奈川県横須賀市長坂の「町田食品」が協力してくれました。二種類同時に蒸して、きねつき方式の機械で同じ回数つき、味付けなしで、試食してもらいました。もちろん試食する時はどちらが国産で、どちらが中国産かは伏せておき、良いと思う方を選びます。結果はほぼ半々でした。試食してもらいながら「あなたは安い中国産のおもちを選びますか?少々高くても国内産を選びますか?」という質問に理由もあわせて答えてもらったところ、多くの人が「高くても国産」と回答しました。 小さな男の子を連れた若いお母さんは「子どもがおもち大好きで、うちは年中自分でついて食べてます」と真剣な顔で試食。選んだものが国産とわかると「よかった」と胸をなで下ろしていました。「私はこっちが甘くておいしいと思う」と国産のおもちを指さした女性は「地元に農家が多くて農業を守りたいので、食べ物は国産にこだわります」と言います。 一方で「むずかしい」「違いがわからない」という声が多かったのも事実。なかには「高くても国産を買う」と答えながら、中国産を選んだ人も。とくに「おもちは正月だけ」という人に多く、「子どもがいて安全性が気になるので、野菜も魚も少々高くても国産を選ぶ」という若い女性も、選んだのが中国産と聞いてガックリ。「ごまかされるのが嫌なんです。気をつけなきゃ」とコメントしていました。 「安いので中国産を買う」と答えた人は全員、「わからない」人や、選んだのが中国産だった人でした。中国産白もちのコシの無さを「舌触りがよい」と答えた人も。 食べ比べに店頭を貸して協力してくれた「すず屋」さんは、佃煮や漬物などを昔ながらに量り売りする繁盛店です。食べ比べと聞いて「本物の良さがお客さんにわかってもらえるいい機会になると思った」と快諾してくれました。 町田食品とは先代からのつきあいで、「うちのおもちは町田食品だけ。だっておいしいもの。うちはほとんどが固定客だから。味が変わったら、すぐ苦情から出るからよそには変えられないの」と太鼓判を押します。
勉強になった。話が直接聞けた国産もちにこだわる町田食品(神奈川・横須賀市)国産もちのおいしさ届けたい「国産の、本当においしいおもちを作って届けたい」――今回、食べ比べに協力してくれた「町田食品」社長の町田順子さん(40)はこの思い一筋に餅作りに取り組むこだわりの餅屋さんです。食べ比べ当日の朝、住宅街のなかの小さな厨房を訪ねると、プーンともち米を蒸かすいいにおいがします。「お米の顔を見ながら、弱火でゆっくり蒸かすと、いいもち米ほど良さが生きるんです。ほら、白毛もちと中国産ではこんなに色も匂いも違うでしょう」と町田さん。 ひねり出し式でなくペッタンペッタンとつく方式の機械でもちをつきながら「私はあんまりつき過ぎないように、少しツブツブ感が残るようにしています。お雑煮にした時溶けてしまわず、よく味がなじむおもちを作りたいんです。でもこれからはお米に合ったつき具合なども、もっともっと研究しないと」と町田さんは言います。アツアツのつきたて餅を、まるで魔術師のようによどみなく扱う町田さんの手元は「餅は餅屋」という言葉がぴったり。「餅って何度やっても扱いが難しくて、奥が深くて面白いんです」。 スーパーなどのパック切り餅が安いのは、実はコーンスターチで水増ししているから。でも町田さんは「価格競争ではなく、本物の餅のおいしさを知ってもらいたい」と、原料のもち米にこだわっています。「三年前、仕入れ先まかせだったもち米が、ある日を境に味がまったく変わってしまって。これは変だ」と産地や作り方を調べ始め、今でも米屋さん頼みにせず、必ず自分で試作し、味を確認しています。 そして今年は「高くても手に入ればいい方」という空前のもち米不足。「米卸さんに注文してもない、と言うんです。タウンページで他の米屋さんに電話しても殺伐とした雰囲気で、これはただごとじゃないと、あちこち探しまくるなかで農民連にも電話をしたんです」と、農民連との出会いを語る町田さん。「農民連の応援は本当に心強い。これまで減反や生産者のことまで知る機会がありませんでした。でも今後はそういうことも考えねばと思うようになりました」と言います。 商店街で消費者と直接ふれあった今回の食べ比べも「とても勉強になりました。国産がどうしていいのか、作り手として伝えなければならないことを直接話せるいい機会になりました」と町田さん。「お米は日本人の体に合うすばらしい食べ物。米離れしてほしくないから、今後はおこわやちまきなどにも挑戦したい。安全で、本当においしい物作りをしていきたい」。熱い思いが胸にあふれています。
*「町田食品」 神奈川県横須賀市長坂3丁目9―38 TEL(FAX兼用)0468―58―1368 (新聞「農民」2003.12.8付)
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[2003年12月]
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