「農民」記事データベース20031201-613-10

『きくまの民話と伝説』

愛媛県菊間町


芋喰い坊さん(港町)

 むかーし遍照院にゃあ、瑞映和尚(ずいえいおしょう)ゆうえらあいお坊さんがおったんじゃと。ものすごーく芋の好きなお坊さんでのおぅ、いっつもいっつも芋を食べとったんじゃとい。

 ようでけたお人でのおぅ、朝も晩も村人のためにいろいろ考えとったそうな。

 ある日、

「村に港を作ったらみいなのためになる。」と思い立って、ほして前よりもだいぶこと芋を食べもって「ひいちもん」(日一文)をためたんじゃとい。

 港は松笠から遍照院までとすごーく大(おお)けな考えで「これが出来りゃあ村の衆もずいぶんと楽になるじゃろう。」と、せっせと「ひいちもん」をためて、ほいで苦労の末に立派な港がでけた。喜ぶ村のもん……。その陰にゃそがいな坊さんをように思わんやつもおった。

 ある日、波止浜におよばれがあってのおぅ、ごっつおうをよばれとる内に、“ポックリ”と死んでしもたんじゃと。最後に食べた大好物の芋の中に毒がはいっとったんじゃそうな。悪もんはどうなったか知らんけんど、それから村のもんは口々に、

「芋喰い坊さん、芋喰い坊さん。」ゆうて今でも語り継がれ、親しまれとるんぞ。

(「きくまの民話と伝説」より)
(四国ブロック編集協力員 大道法幸=愛媛・菊間農民組合、写真は大道法幸さんの撮影〈写真はありません〉

(新聞「農民」2003.12.1付)
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2003年12月

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