材料と旬の味にこだわるレストラン
農民連の米と野菜は本物
素材のうま味を生かせる
岡山市内の「ミレット」オーナーシェフ・岡田賢治さん
農民連の生産者が作った野菜をふんだんに使った料理をふるまう、岡山市内のレストラン「ミレット」。この店で、雑穀ごはんを中心に旬の野菜でメニューを作るオーナーシェフ、岡田賢治さん(33)に材料と食へのこだわり、農業への思いをうかがいました。
食べる人に責任もちたい
レストラン版野菜ボックス
「今週届いたジャガイモとエダマメは、美星町の豚足を使ってコロッケにしました」――オーナーシェフの岡田さんは農民連から届いた旬の野菜を見て、そのつどメニューを考えます。
「季節のものが当り前だと思う」と言う岡田さんは、「旬のものなら、味をカバーするいろいろなものを入れないでいい」と話し、旬のもの、地元のものにこだわっています。
農民連からの旬の野菜は週三回の配達で、何が来るかは届いてみないとわかりません。さながら、野菜ボックスのレストラン版です。
顔わかるので信頼がおける
「農民連の野菜もお米も、とてもおいしくて評判が良い」と話す岡田さんが「ミレット」をオープンしたのは二年前(〇一年)の九月。この時、岡山食健連の役員でもあり、津山市で「半鐘屋」という老舗の雑穀店を営む母親の幸子さんのつながりで、農民連に農産物の供給を要請しました。
「初めて生産者を訪問した時にたくさん頂いたオクラはとてもおいしかった。全然味が違う、作っている人の顔がわかるので信頼がおける」と実感を込めて語ります。
冷凍では本物の味出せない
手に職をつけたいと考え、大阪の調理師専門学校に進学、東京都内のフランス料理店で修業した岡田さんですが、フランス料理の枠にとらわれることに行き詰まったこともあったといいます。
そんななか、日本人が地域で普段食べてきた料理を研究しようと考えるようになり、「キハチ」という健康と味にこだわったレストランで働くことにします。ここで働きながら「食材の味を大切にする。毎日食べてもあきない味」を覚えた岡田さんはキハチで修行後、ホテルやイタリア料理店の料理長を務めました。
そんな岡田さんに、別の会社から、大型レストラン出店の話が舞い込みます。しかしシステム上冷凍ものを使わざるを得なくなり、「冷凍ものを使って本物の味は出せない」と仕事を断ります。
そんな経緯を語りながら、「料理は食べる人の体に染み込むもの」と話す岡田さんは「自分が責任を持てないものを出したくない。料理するものに対して責任を持ちたかった」と当時のことを振り返ります。
雑穀ごはんとみそ汁にも…
その後岡山市に戻り、英語で「雑穀」という意味の「ミレット」を出店。この地方の人々が食べてきたものを再発掘して現代風にアレンジしています。
中心は十種類の雑穀を使った雑穀ごはんですが、もう一つこだわっているのがみそ汁。「日本の食は、ご飯を中心にみそ汁と地元で取れた野菜のおかず。みそ汁は具だくさんにすると、甘みやこくが生まれてご飯にピッタリ」と。みそ汁に使う味噌は大豆や塩などの材料を自ら調達して加工業者に持ち込み、はと麦入りのものを作っています。
雑穀ごはんの玄米も無農薬で栽培した農民連の朝日米を使っています。「かめばかむほど甘みが出て、モチモチした食感がある」と満足げに語る岡田さん。「雑穀はミネラルが豊富で健康に良い」と話は尽きません。
そんな岡田さんが危機感を抱いているのが輸入農産物の激増です。「本物の味は素材のうま味が分かる料理。そのためには地元の新鮮な、完熟野菜が欠かせない。輸入ものでは絶対に本物の味は出せない」と言い切ります。
「農民連の農産物は、品質に対して安すぎるくらい。規格外の農産物やお米など、農民連の農産物を店頭で販売したりしながら、生産者に利益を還元するシステムを作りたい」と意欲的な岡田さん。「生産者とお客さんを密接に結び付けて『日本の自給率を高めていかなければ、自分の生活が大変になってしまうよ』ということを伝えていきたい」と抱負を語ってくれました。
ミレット
▼営業時間 12時〜21時(火曜日は定休日)
*昼は有機野菜と雑穀を使った定食。夜は炭火焼を中心に、ジャンルにとらわれない新しいスタイルの料理
▼岡山市中山下2‐3‐65
▼TEL 086・227・2228
(新聞「農民」2003.11.17付)
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