旬の味
「株価が上がった。円が値上がりしている」と、テレビも新聞もトップで伝えているが庶民にはもうひとつピンとこない▼こうしたニュースを見るたびに落語の「花見酒」を思い出す。辰つぁん、熊さんが花見で一儲けしようと借金して酒を仕入れる。桜の名所・向島まで運ぶうちに酒の匂いに我慢が出来なくなって、まず借りた釣銭の十文を熊が辰に渡して飲む。今度は辰がその十文を熊に渡して飲む。これを繰り返して結局みんな飲んでしまって樽は空っぽ▼まさにいま世界は「花見酒経済」。金のやり取りはあっても結局は何も残らなかったということになるのだろう。食料や石油もこの花見の酒になりかねない。WTOという宴で金を巻き上げる企ては今回も破綻した▼農産物を売買できる人たちが貿易のルールを決めているが、飢えている国々の多くの人々に食料が行き届いていないがゆえに、国際食糧市場が今の形で成り立っていることを日本人はもっと認識すべきだ。今日の晩酌は自分でつくったキュウリとナスの漬物で一献といこう。 (本)
(新聞「農民」2003.10.27付)
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[2003年10月]
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