冷害の現場から政治革新の流れを怒り倍増政府の米つぶしに岩手・軽米町
長く続いた天候不順、震えが出るほどの朝晩の冷え込み、青いまま天をつく稲穂…。九月十五日の作況指数で五十二と発表された岩手県北部で冷害の実態と、それでも米つぶしを進める政府への怒りの声を聞きました。
つっ立ったままの青い稲穂が…二戸市から車で三十分ほどの場所にある軽米町(かるまいちょう)は、太平洋側から吹き付ける冷たい風“ヤマセ”の影響を受ける冷害の常襲地帯。今年は、七月の低温による不稔障害に加え、晴天が三日も続かなかったという八、九月の天候不順で、不稔モミや未熟粒、イモチ病が目立ちます。 平野部の比較的生育が良い田んぼで稲刈りをしていた農家は「モミで平年の半分くらい。クズ米が一割で止まればいいが…」。山あいには、まだ青い稲穂がつっ立ったままの田んぼもあります。
ギリギリまで充実させたら「例年なら稲刈り最盛期だが、今年は霜が降るギリギリまで遅らせて、稲穂を充実させる」。軽米町で稲作三ヘクタールを耕作する関向良雄さん(49)はこう話します。 さらに、田植えの時期や品種など、田んぼ一枚一枚の微妙な違いで生育に大きな差が出ているため、「どれくらいの収量になるかは、刈ってみないとわからない」と不安を隠せません。
米価の暴落で冷害の痛みも共済金も、平年作の七割までしか補てんされないため、諸経費を差し引いた所得は三分の一以下。新しい機械を購入した農家は借金返済に行き詰まってしまいます。 「たとえ新たな融資を受け、返済を延長したとしても、来年米価が下がればまた困る。冷害も大変だが、米の値段が下がればやっていけない」と語る関向さん。ミニマムアクセス米を輸入しながら農家に減反を押し付け、米価を市場原理にまかせて暴落させてきた国の政治が、被害農家の痛みを倍増させています。
厳しい地域に減反押し付け「これ以上、米の値段が下がったら赤字になる」と危機感を強めるのは軽米町で葉タバコ一・六ヘクタールと米九十アールを耕作している高沢昇さん(50)。米の不作による減収は、葉タバコでなんとか補うものの、来年以降の米作りは、「米の収入よりも機械や肥料など経費の方が高くてどうにもならない。『米改革』で売れる米作りが進めば、県内の減反は気象条件が厳しい県北に集中することになる」と、危機感を強めます。
米づくりの底辺を支える農政ぜひ葉タバコの生産が盛んな軽米町では、一戸あたりの米の面積は五十アールほど。それでも「米作りは農家の基本的な暮らしの一部になっている」と関向さん。 「厳しいなかで、日本の米作りを底辺で支える地域が、安心して米を生産できる政治が必要。米価の下支えなどの対策を」と政治の流れを変える必要性を語りました。
被害農家に追い討ちかける政治変えよう岩手県農民連 堂前貢副会長米改革で「適地適作」を進めると県は言うが、厳しい条件のもとで必死になって米を作ってきた農家の思いを逆なでするものだ。市場原理から見れば、銘柄米が生産できない冷害地帯は米の不適地となる。こうした地域の減反を拡大し、米生産を切り捨てれば、地域農業は維持できなくなる。政府は百万ヘクタールを超える減反を農家に押し付け、すでに日本の米生産量は、平年作でも消費量より十五万トンも少ない。備蓄米の数量を切り下げ、足りなくなれば輸入すればよいという政策は、米の安定供給にとっても大問題。米をもうけの対象にする財界や大手米卸のための米改革ではなく、国民のための米政策が必要だ。
(新聞「農民」2003.10.27付)
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[2003年10月]
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