『きくまの民話と伝説』愛媛県菊間町
たぶらかされた話(西山)わしが若い頃じっさいに化かされた話をしちゃろわい。急いだり近道しょう思たりすると、よーおにたぶらかされて、田圃の中やら自分の家のまわりをぐるぐる回って、挙句にどこいつれていかれるかわからんそうな。 夜中の一時頃じゃったと思うが、遅うなったんで、町い泊ろかどうしようか思たんじゃが、ほいでもまあボツボツ歩いて戻りよったんよ。ほしたらあの大松とゆうか、急な曲り角がありましょ、あの飯掛(めしか)けよ、飯掛け松の事よ。これい戻りよったら知っとる女子(おなご)がふたあり、ブツブツいいもて前い行きよる。 「よっしゃこれい追いついちゃろ。」思て、なーんぼ一生懸命歩いてもつーいな間隔で向(むこ)い行きよる。 「えらい足の速い女子じゃ。」思たがやっぱしつーいに向い行きよる。 そいであのタンダ(谷田)池いかゝる頃、そいでももうほとんど追いついた時分にふたありの姿が池の端のやぶの中いフッと消えて、ほいでブッブッゆう声も一緒にやんでしもた。 「こらキツネにたぶらかされとった。」と思たら、急に、おとろしなったけんど、しゃあんと背中のばしてそろり、そろり、歩いてもんたんよ。 タンダ(谷田)池の端通るときゃあ気いつけいよ。 (「きくまの民話と伝説」より)
*西山のタンダ池は道路の拡幅で埋められましたが、明田には飯掛け松とタンダ池が今でもあります。 (四国ブロック編集協力員 大道法幸=愛媛・菊間農民組合)
(新聞「農民」2003.10.13付)
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[2003年10月]
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