演劇現在の日本と韓国、朝鮮考えるピープルシアター プラットホーム――光の夏
ピープルシアターは「プラットホーム――光の夏」を上演します。この作品は同劇団を主宰する森井睦の作・演出によるプラットホームシリーズの最後を飾るもの。駅のプラットホームに行き交う人たちの人間模様を描きながら、現代日本のさまざまな問題を浮き彫りにしたものです。これまで「炎の秋」「聖なる冬」「嘆きの春」とつづいてきました。 「光の夏」はJR新大久保駅で起きたプラットホーム墜落轢死事件をヒントに書かれたもの。しかし、実話ではなく作者は、この悲惨な事件から、現在の日本と韓国、朝鮮を考える抽象的な事件としてとらえ、ひとつのドラマをつくりあげました。 物語は駅のホームで年老いた日本の母と朝鮮の母がひとつの花束を献花するところから始まります。夏の夕暮れのことです。そして、二人の母の思い出へと時代をさかのぼっていきます。そこには、福岡刑務所で獄死した朝鮮人留学生で詩人の尹東柱(ユン・ドンジュ)の姿や、機銃掃射で殺されたオーケストラの楽団員たちの活動が浮かび上がってきます。現実の事件と戦前の暗黒の時代状況とが重層的に描かれていきます。 森井睦さんは「駅のプラットホームを現代の辻と想定している。辻とは天と地、あの世とこの世の境界である。人と人との出会いがあり別れがあり、喜怒哀楽がある。そこに興味があった。四季の最後は夏と決めていた。それは一九四五年の夏のことを描きたいと思っていた。尹東柱の詩集『空と風と星と詩』を読んで感動したことと、新大久保駅の事件が結びついて、この作品を書くことができた」と語っています。尹東柱の二宮聡を中心にした若い俳優と、客演の河東けい(関西芸術座)、岡田和子らのベテラン陣がからみます。 なお、特別企画「尹東柱を歌う、詠む、聴く、語る」も10月30日・11月1日午後4時半から上演会場で開かれます。 (鈴木太郎)
*10月29日〜11月2日、東京・池袋・東京芸術劇場小ホール1。連絡先=ピープルシアターTEL042(371)4992。 (新聞「農民」2003.10.13付)
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[2003年10月]
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