小さくても輝く、自立した市町村に長野で第2回自治体フォーラム
国の強制合併に抗して、地方自治を守る自立した町村づくりを目指そう――九月二十七日から二日間、長野県阿智村で「第二回小さくても輝く自治体フォーラム」が行われました。
知恵と力出しあい自治守る市町村長ら 全国145自治体から参加自立か合併かのせめぎあいの中で雪深い同県栄村で二月に行われた第一回フォーラムでは、強制合併に反対するとともに、“顔が見える”小規模自治体の個性あふれる取り組みを交流。「自然と農林業を支える自治体を守ることは、全国民の課題であり、政府の責務」などとする「雪国からのアピール」を確認しました。 「栄村で行ったフォーラムは大きな話題となり、四月に発表された地方制度調査会の中間報告で小さな自治体をつぶす方針を先送りするインパクトとなった」。こう報告した自治体問題研究所の加茂利男理事長は、「合併しないで自立の道を選択する流れと、合併推進の流れがせめぎあう中で、どうやったら自立してやっていけるのか、ノウハウを作る場にしたい」と、今回のフォーラムを具体的な実践と知恵を共有しあう場にすることを提案しました。
国の財政削減で小さな自治体は大きな打撃続いて、政府が計画する地方財政の「三位一体の改革」や、自民党の地方交付税「段階補正の見直し」について、立命館大学の森裕之助教授が報告。森助教授は「段階補正の見直しは、国の財政削減にはほとんど効果がないにもかかわらず、六千人以下の小規模自治体に深刻な収入削減をもたらす」と指摘し、高知県と長野県における市町村ごとの試算値を示して「小規模自治体に過酷な財政困難を強いて合併を進めるものだ」と告発しました。 試算について加茂氏は、「段階補正の見直しは決まっていないし、許さない大きな声をあげなければいけない。一方、三五%削減とか、塩川前財務大臣が言ったような四〇%削減は大げさ。リアルに見て最悪の場合、地方交付税減額一七〜一八%と補助金の削減で、歳入総額が二割から三割減少することはありうる」と説明。 続いて、町村いじめとも言える政府の攻撃のもとでも自立を目指す自治体からの実践報告が行われました。
自立への道筋つくろうとさまざまな努力今年の初めに、合併を選択しない町づくりを決めた新潟県津南町。滝沢秀雄助役は「十八歳以上の全町民にアンケートを行ったところ合併反対が五七%、そのうち二十歳代が六五%で、若い人たちの町を担う姿勢を力強く感じた」と語りました。さらに滝沢助役は、津南町が未墾の開拓地六百五十ヘクタールを含む二千六百ヘクタールの農地整備を行ったことを紹介しながら「農業立地を町是として様々な事業を取り組んでいきたい。全職員が参加する中で自立への道筋を作ろうと取り組んでいる」と報告しました。 「村民の将来、自分たちの暮らしから合併を考えるために、五人以上の村民が村政や生活など様々な課題で学習や行動することに支援している」。こう話したフォーラム開催地、阿智村の岡庭一雄村長は、「合併したら地域経済へのきめ細かい支援ができなくなる」と指摘。そのうえで、「社会福祉協議会を近隣の町村で持つことや、県に行政の一部の業務を補完してもらいながら苦しい財政を克服して自立し、誇りをもって生きていける方向を考えたい」と語りました。
自治組織つよめ、村の新しいモデルづくり「五年後、現在の村の財政規模を三〇%削減した予算を想定しながら、村の将来モデル作りを進めている」と報告した長野県栄村の高橋彦芳村長は以下のように語りました。「集落機能の見直しで自治組織を強固にしていくことともに、削減される十億円分を取り戻すため、大学を退職した専門家も募集しながら特産品の開発に取り組んでいる」。 講演を行った田中知事は、県として自立をめざす自治体に支援を行う「長野県市町村『自立』支援プラン」を会場で公表。京都大学の岡田知弘教授が「自立のための地域経済」について報告しました。 参加者は、自治体の「多様性をみとめ、自主的選択ができる地方自治制度の設計」を求めるアピールを採択しました。
「自立支援プラン」作る田中・長野県知事が公表(講演要旨)長野県として市町村『自立』支援プランを作成しました。長野県で二十年間のシミュレーションをしましたら、十六年後には合併しなかったところよりも、したところのほうが、交付税の額が少なくなるという衝撃的データが出ました。 私は、交付税の算定の基礎は、人口だけでなく、森林や田畑など、社会的な価値のあるものを町村がどれだけ担っているかということにしないといけないと思います。 長野県は合併支援ではなく「町づくり支援室」を作りました。農家の家屋を改造して、子どもやお年寄りを預かる、宅幼老所を小学校区の学区単位に二百九十ほど設けていこうと思っています。 小学校の学区単位というのは、大きな街においても、人の顔が見えるきずなの単位だと思います。それを長野県はコモンズと呼んでいます。 自治体がきちんと福祉をやる。しかし、へき地医療については、県がお手伝いしましょう。給食などは町村連合でやっていきましょう――というようなことを町村に根ざして考えていきたいと思っています。 現在、県内百十八の市町村に計百三十八人の県職員を派遣させていただいていますが、県の駐在員は監視係、お目付け役ではありません。ごいっしょに仕事をすることで、県の事業などもより良いものになっていくと思っています。 小さな集落にこそ、地域のきずながあるということを全国に発信していきたいと思います。
(新聞「農民」2003.10.13付)
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[2003年10月]
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