米と地域農業どう守り発展させるか岩手・一関で「米改革」シンポジウム
行政、農民連、農協理事、議員…熱心な発言、真剣にメモとる姿岩手県の西磐井農民組合と農協労組岩手南支部主催の「米と農業を考えるシンポジウム」が九月六日、一関市で開かれました。一関市、花泉町、平泉町、県一関地方振興局農林部、岩手南農協、三市町の農業委員会、両磐労連、自治労連両磐支部、三市町の職員労組、新婦人一関支部、一関民商が後援。一関地方の農業に関係する分野が一堂に会する地域ぐるみのシンポジウムとなりました。 基調講演は堂前貢・農民連副会長が行い、シンポジウムのパネリストには県一関地方振興局農林部の笹村正農林企画課長、岩手南農協の三浦登夫営農部長、一関認定農業者の会の佐藤勲副会長と、堂前氏。それぞれの立場から発言し、農政の大転換をねらう「米政策改革大綱」が出されたなかで、地域農業をどう守り発展させるかをめぐって熱心に討論しました。 農民組合員をはじめ農協理事や農家組合長、議員など百五十人が参加、「米改革」のねらいと中身を知ろうと真剣にメモをとる姿が目立ちました。
米作り続ける様々な工夫を堂前氏は「農政の大転換! 『米政策改革大綱』でどうなる日本の農業」と題して基調講演。「米改革」は中小農家を切り捨てるものだと指摘し、「農家が『米改革の具体化』にどう対応するのか重要な判断を迫られているなかで、産地づくり推進交付金や担い手の実態、集落ビジョンの問題点などを広く知らせていくことが大事」と強調。「今回の助成措置は三年と期間を区切った措置であり、政府はいっさいの助成を七年後にはやめようとしていること」を明らかにし、「主食である米を作り続けるための様々な工夫を、集落のみんなで話し合って創りあげるとともに、米作りに意欲のある農家は誰でも『国の助成』が受けられる農政の実現をめざそう」と呼びかけました。 そして堂前氏は、(1)生産費を償える生産者米価の実現(2)WTO農業協定の根本的な見直し(3)余裕ある備蓄米(二百万トン)と回転備蓄から棚上げ備蓄への転換(4)米の売り惜しみ、買い占めに対する規制強化の四点を、農民連として政府に求めていることを紹介しました。 その後のシンポジウムで、笹村氏は「西磐井地域は良質米の産地であり、米が農業の七割を占めている。農地を担い手に集積していくことになるが、集落のなかでもれる農家がないようにしていく。『米政策改革大綱』は閣議決定されており、県の立場としてはみなさんの意見を聞きながら前に向かってゆかざるを得ない」と発言。 三浦氏は「農協の販売収入のうち米が六五%を占めており、米作りをやめるわけにはいかない。米の産地間競争が、農協間でも激しくなってきている。化学肥料を半分にして減・減農薬栽培を行い、米卸や消費者からも目を向けられるようにしていきたい。そのために営農相談会を開いている。生産を高め、所得を上げ、生活の安定につながるよう努力していきたい」と語りました。 佐藤氏は「六月に認定農業者の懇談会があり、『米政策改革大綱』の話を聞いたが、どういう方向にいくのか分からなかった。認定農業者といってもメリットはない。体の続く限り、米を作っていきたい。水田の果たしている役割をもっと考えてほしい」と指摘。 堂前氏は、冷害による米不足の問題にふれながら、「いま考えてほしいことがある。国は『輸入自由化をさせない』『食管制度を守る』『米価の下落を防ぐため』という理由で三十年以上も減反を押しつけてきた。農家はやむなく協力してきた。国にだまされ、ひどい仕打ちを受け、犠牲になってきたのは農家だ。国は米からいっさい手を引こうとしている。もうだまされてはならない」と強調し、大きな拍手をあびました。
「米改革」は中小農家切り捨てもうだまされてはならない作れなのか、作るななのか会場からは、「『米改革』は米を農民に作れというのか、作るなというのか、知りたい。国のやり方は納得できない」という声とともに「担い手集落ビジョンづくりが進められているが、一人でもおちこぼれがないようにしてほしい」「いもち病や不稔が発生し、大変な事態だ。集落ビジョンの話どころではない」などの意見や疑問も出されました。 農協労組の参加者は「農民組合と共催でシンポジウムをやり、生産者と共感しあえる場を持ててよかった」と言います。西磐井農民組合の組合員は「地域に存在感のある組織ということを示せたと思う」と成功を喜び、渡辺勇一副組合長は「このようなシンポや学習会をもっときめ細かく地域で開き、『米改革』の中身を知らせ、米と地域の農業を守るために頑張る」と決意を語りました。
(新聞「農民」2003.9.22付)
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[2003年9月]
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