「農民」記事データベース20030915-602-11

旬の味


 約六万年ぶりに火星が地球に大接近した八月二十七日、望遠鏡とはいかず双眼鏡を持って娘の愛と一緒に屋根に登って雲の隙間に強い赤色光を輝かせる火星とご対面。といっても肉眼で見たのとほとんどかわらない▼古代中国では不吉の予兆としたというが、実りの秋を前に見通しが暗い暗い話は続くのか。郡内一の米生産規模を誇っていた会員が、研修先の新潟で脳血栓のために帰らぬ人となった。五十一歳だった。彼は「新潟と福岡の米を合わせた新しい品種を作りたい」と意欲満々だった▼福岡市立美術館ではミレー三大名画展が開かれている。代表作である「落穂拾い」は一八五七年作、左手を腰にあてがい、右手で一穂ずつ拾う姿は、親近感を漂せてくれる。夫婦揃って一日の恵に祈っているのか、荷車に載った収穫物に感謝しているのか、「晩鐘」の主役は、名もない農夫婦たちである▼どこまでも続く地平線、一本の棒を持った少女と牧羊犬の厳しい目。「羊飼いの少女」だが、働くこと、生活感の充実した作品だ。秋は芸術の季節でもある。

(督)

(新聞「農民」2003.9.15付)
ライン

2003年9月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2003, 農民運動全国連合会