米「改革」関連予算稲作再生は農民リストラではできない!(1/2)農民だましの魔法を解剖する/稲作再生は農民リストラではできない!(2/2)
自民党は七月下旬、米「改革」関連予算の大枠を決め、農水省が自民党に代わって記者会見で公表しました。 業界紙(米麦日報)が「魔法」と批評するこの予算案、自民党・農水省・全中が密室で協議し、総選挙対策として打ち出した政治臭プンプンのシロモノです。 「総額三千億円確保」「転作助成現行上回る」――“勝利”ムードにひたっている向きもありますが、これで、米危機の打開ができるわけでも、「米つぶし改革」の害毒が帳消しになるわけでもありません。 七月二十八日、農民連は食健連とともに農水省から説明を受けましたが、この内容を中心に、「魔法」を解剖します。
本当に「総額3千億円確保」?「この予算が確保できたというわけではなく、これから財務省と折衝する」農民連の質問に、農水省関係者はこう答えました。勘ぐれば、八月下旬に農水省が決める来年度予算要求で「三千億円」をぶちあげ、総選挙が終わった十二月に「財務省との折衝」で大幅に減額するという伏線ともとれます。 また「三千億円」を確保できたとしても、「それがどうした!」という程度のもの。米関連予算は昨年が四千億円、今年は三千百五十九億円(表1)。減反を四%増やし、予算は五%削るこれで大いばりする方がどうかしています。
3年後は「ガクッ」と減り、7年後はゼロ忘れてならないのは、この対策が「米改革実行プログラム」にそったものであること。「プログラム」は、七年後の二〇一〇(平成二十二)年に転作助成や価格補てんなどをゼロにする「米づくりの本来あるべき姿」を実現することを至上命題とし、その実現に向けて米・農業予算をどんどん削減することを求めています(表2)。
自民党案が対策期間を「三年間」にしたのも、その一環です。「三年間が終わった後に、かりに似たような対策が続くとしても、“リセット”によって、ガクッと下がるだろう」(農水省)。 つまり「プログラム」の第二段階(平成二十〜二十一年)に、転作助成や価格補てんが続くかどうか分からない、かりに続くとしても“リセット”(御破算)で「ガクッ」と下げるというわけです。しかも平成二十二年からはゼロ。 これでは「朝三暮四」(猿のエサを節約するために栗の実を朝三つ、夕方に四つやろうと言ったら猿たちが怒ったので、 それなら朝四つ、夕方三つやろうと言ったら大喜びしたという中国の寓話)ならぬ、「朝三暮零」ではありませんか。
どうなる? 転作助成(産地づくり対策)「わかりやすく」するはずだった転作助成を、“中二階”を作ったりして「増改築を繰り返した温泉旅館」(食糧庁OB)のように雑多にしたことに加えて、「使い道や単価は都道府県・市町村協議会まかせ」にしたために、まったく「わかりにくい」ものになった――これが産地づくり対策の特徴です(表3)。
計算上は、十アール当たり最高額六万三千円にはなりますが、もらってみなければわからないのが実態です。
農家個々への転作助成をやめることも産地づくり推進交付金の算定単価は表3のとおりですが、これをどう使うかは市町村協議会で話し合って決める」。 農民連が「それならば担い手加算をやめ、全額を『基本部分』として農家に平等に払ってもいいのか」と質問すると「いや、それはまずい。ガイドラインで“しばり”をかける」という回答。 さらに「農家個々に面積当たりで助成するのをやめるという決め方ならいい」とも。 岩手県では、小規模農家が手持ちの農機を処分して「担い手」に作業を委託した場合、「稲作作業集積促進費」を加算する制度を七月に作りました(十アール千二百五十円〜七千五百円)。協議会が決めれば、交付金をこういう「刀狩り」に回すことさえ想定されます。
3月までに「ビジョン」を作らなければ交付金は出さない交付金を出す条件は、来年三月までに、市町村あるいは合併農協単位で「地域水田農業ビジョン」を作ること。その中身は市町村や集落で話し合って、稲作を続ける者とやめる者をリストアップすることです。 いま、市町村や農協の担当者が一番頭を痛めているのは、この点です。「集落で”あんたは米作りをやめろとか、農機を処分しろ“などとは言えない」「農業関係者なら皆、高齢化や担い手不足を憂えている。役人や御用学者が、ここに付け込み、農村に一番なじまないやり方を強要することにハラが立つ」(岩手県のJA関係者)。 机上で作った「米改革」プランの最大の弱点はここにあります。「米改革」の凶暴さと弱点をしっかり見抜きながら、集落や自治体で、農民と農村の寸法に合い、地域農業を本当に守ることができる「ビジョン」を作るために知恵をしぼり、地域の農民仲間と共同することが求められています。
「畑地化」=究極 の水田つぶし自民党案で急浮上したのが「畑地化推進」対策。 「畑地化は『永久転作』であり、転作助成以上のメリット感がある対策として、十アール当たり十六万円を一時金で払う。国は八万円出すが、地域が八万円以上拠出することが条件だ。『地域の拠出』は農家のトモ補償を考えている。稲作を続ける農家が金を出し、『永久転作』する農家に支払うという考え方だ。規模は一カ所三十〜五十ヘクタールのまとまりを考えている」(農水省)。 これは第一に、転作助成の「四階部分」どころか、究極の水田つぶしを農民負担で実施する冷酷な政策です。 第二に、二〇〇〇〜〇三年に稲の作付実績がある水田を、三十〜五十ヘクタールもまとめて畑地化するという条件からみて、優良な水田を「永久に」つぶすねらいを持っているといわざるをえません。
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(新聞「農民」2003.8.PR版)
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[2003年8月]
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