「農民」記事データベース20030825-599-08

い草農家大ピンチ

中国などからの輸入急増


最近7年間

い草農家2060人→885人

製品取扱高が3割に激減

 熊本・八代の農家訪ねて

 久しぶりの梅雨の晴れ間となった七月十六日、熊本農民連事務局長の紺屋本稔さんと私(横林)の二人で、い草の収穫・調整作業に忙しい八代市内平山新町の本田繁幸さん(農民連会員)宅を訪ねました。

 本田さんは、代々い草を中心に、い草と米を栽培する専業農家。繁幸さん、奥さんのさゆみさん、繁幸さんのお母さんの三人が頑張っています。お父さんは体を悪くして、農作業には出られません。

 い草は、前年の十一月下旬頃、水田に定植し、施肥、先刈り、あみ張り(倒伏防止)などの作業を経て、六月下旬〜七月下旬に収穫されます。そして泥ぞめ、乾燥、収納の作業が行われた後、年間を通して畳表の製品として織られます。一部の農家は、原草の販売もしています。

 私たちが訪問した時は、泥ぞめした、い草が台車に整然と並べられ、乾燥の準備中でした。

 私は二十年前、い草を栽培しました。当時は大学生や山間地の農家の手を借りながら、ほとんど手作業。現在では、収穫から乾燥まですべて機械化が進み、余裕を持って作業ができるそうです。

 「ヒノミドリ」という新しい品種を百四十アール栽培している本田さんは、三人の労力で泥ぞめ、乾燥の仕事をなんなくこなしていました。それでも畳表の製品としての品質を左右する泥ぞめ、乾燥の作業は気が抜けないとのことでした。

 八代地方は、い草が主力の農産物でしたが、中国などからの輸入品の増加で農家は大打撃を受けています。八代地域農協の、い業部員は一九九五年度二千六十人でしたが、〇二年度には八百八十五人と激減しています。農協における、い草製品の取扱高は九五年度八十四億円余から、〇二年度二十五億円と、五十九億円以上も減少しています。

 本田さん宅では、以前から広島の問屋さんと直接取引しています。年度初めの話し合いで価格を設定し、ある程度の価格を維持してこれたそうです。しかし、近年の、い草をめぐる情勢は、希望するような価格設定ができないとのこと。

 また、昨年までは、い草の後の水田に稲を植えてきましたが、食味などの関係で今年から飼料用の稲を作付けるそうです。百四十アールのうち百アールの面積に作付けるようですが、今後どうなるかは、まだ見えてこない部分が多いとのことでした。

 農民としての誇りを持っててきぱきと働く本田さんたちの仕事を見ながら、家族経営のあり方や日本の農業をどう守り、発展させるべきかを考えさせられる訪問でした。

(九州ブロック編集協力員 横林政美=熊本・八代農民組合)

(新聞「農民」2003.8.25付)
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2003年8月

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