「農民」記事データベース20030804-597-04

第23回全国農協大会

協議案の問題点(5・最終回)

真の農協改革を


農民要求実現の協同組織に

 協同組合は、もっとも歴史の長い、世界最大の七億人の組合員を擁するNGO・NPOです。同じ経営体でも、一般営利企業と異なり、協同組合は公益法人と並ぶ非営利企業に位置づけられます。

 国際協同組合同盟(ICA)は、協同組合を「人々の共通する経済的・社会的・文化的な要求と願いを実現するための自治的な協同組織であり、共同で事業体を民主的に運営管理するもの」と定義しています。

 日本の農協も協同組合である以上、組合員の要求と願いを実現する組織でなければなりません。

 しかし、今回の大会議案は、いま農協の組合員が共通にもっている要求や願いにそって、その実現の道すじを示すものにはなっていません。

 米改革も農協経済事業改革も、全国の村や町からの発想でなく、政府・財界代表からの要求に、農水省が政策の方向づけをしたものを、そのまま受け入れて議案にまとめています。

 したがって、農協の現場と根本的な矛盾があるのは当然です。

 現場無視の机上プラン

 米改革の入り口は「地域水田農業ビジョン」の策定であり、ここでは、「担い手」の明確化が条件づけられています。地域で農民たちが話し合い、合意のうえで「担い手」が誰であるかを区別するという発想そのものが、まったく現場無視の机上プランであることを証明しています。

 欲しくもない不要のミニマム・アクセス米の廃止・削減という全農民の要求を無視し、価格保障なしに「売れる米づくり」で産地間競争を激化させるのも、正常な農協の提案とはいえません。

 農協経営は農家経営の集合体

 農協の事業経営は、本来、農家経営損益の“経過的な集合勘定”にほかなりません。組合員は、みずから参加する協同活動を通して要求を実現するのであり、農協から一方的にメリットを与えられるものではありません。

 農家経営が成り立つための条件づくりが、農協経済事業損益を改善するための正道です。収益性が低いからといって、その業務を停止したり、「外部化」して会社化・業務委託するのは、農協の責任放棄であり、邪道といえます。

 政府・資本からの独立の大切さ

 ヨーロッパの協同組合先進諸国は、七〇年代、八〇年代に組織・経営破たんを経験し、再出発しました。その教訓をふまえて、協同組合の定義が明確化され、組合員主体・組合員参加による民主的運営、政府・資本からの独立を強調した自主・自立の原則などが確認されたのです。この歴史的意義を、全中や全農は忘れたのでしょうか。

 農民要求を直接反映して運営されるのが単位農協です。全国各地で、「農業ビジョン」「米改革」論議が始まれば、混乱は避けられません。農民の農協への結集が、ますます弱まります。それを期待しているのが大資本です。地域ごとの農民要求を基礎に、もう一つの協同活動を農協に結集させましょう。

(おわり)
(農民連参与 山本博史)

(新聞「農民」2003.8.4付)
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2003年8月

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