第23回全国農協大会協議案の問題点(4)経営の健全化
利益優先の経営手法を導入大会協議案の本体は、すでに紹介してきた「米改革戦略」と「経済事業改革指針」を含めて「農と共生の世紀づくりをめざして――JA改革の断行」と題されています。取り組みの基本姿勢を“信頼”“改革”“貢献”としています。
生産履歴記帳と生産基準別分別出荷まず“信頼”は、「消費者に信頼される安全・安心な農産物の提供」と説明されていますが、WTO体制下で農業市場の開放と食の安全性への規制緩和が表裏一体とされていることへの指摘が、どこにも見あたりません。 対策として、生産履歴記帳運動、法令順守の徹底、品質管理強化などが提案されています。そして記帳運動では、「生産基準」別にグループを組織、責任者と農協の担当者を決め、農協と生産者が協定を締結し、圃場を登録し、生産日誌の記帳を徹底指導して、これを農協担当者が定期点検、保管したうえ、生産基準別に分別出荷する仕組みが提案されています。
収益性の低い業務の縮小・廃止次の柱の“改革”では、「組合員の負託に応える経営改革の実践」と説明され、事業の「選択と集中」を強調し、すでにみたように、営農指導を含めた目標管理の徹底、業務の見直しと拠点事業の「外部化」(廃止・分社化・業務委託など)を集中的に推進することが提起されています。 また関連して、「経営の健全化・高度化」の項目では、合併構想完遂のほか、場所別・部門別収支の確立が強調され、「事業利益を念頭においた経営管理手法の導入」が提案されています。これは、農協法第八条で明文化されている「組合はその事業によって組合員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない」という協同組合の非営利規定にも逆うものとなっています。 議案はそのほかにも、収益性の低い業務の縮小・廃止、収益性の高い業務への経営資源(ヒト・モノ・カネ)の重点配置をあげ、「経営の品質向上」を提起しています。 なお議案では、役員の資格要件見直しとして、役員の定年制・任期制と員外監事の導入や不祥事防止策として内部告発制度の整備が提案されており、注目されます。
活動と事業の分離三つ目の柱である“貢献”では、「地域社会に貢献する協同活動の展開」と説明され、「利用者の満足度を高め、地域活性化に貢献する」ことが強調されています。しかし議案全体では、「担い手の明確化」で多数の組合員を差別して協同活動を分断し、規制緩和・自由化で米をはじめとする農村市場の大資本への明け渡しを容認しています。 また議案の最終項目は「組合員中心の事業展開、組合員組織の自立」をあげていますが、その内容は「活動と事業の明確な整理」で部会運営と同様に、助け合い組織でも農協が手を引く「自立化」を求め、「生活活動の整理・重点化」を進めようとしています。 (つづく)
(農民連参与 山本博史)
(新聞「農民」2003.7.28付)
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[2003年7月]
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