カナダからの警告遺伝子組み換え作物が日本で作付されたら…シュマイザーさんの講演「カナダからの警告―もし日本で遺伝子組み換え作物が作付けされたら」多国籍企業モンサントの種子支配とたたかっているカナダの農民パーシー・シュマイザーさん(72)が六月下旬に来日。「遺伝子組み換え(GM)作物の種子が一度自然に放たれれば、すべての種子が汚染され、農民の権利は奪われ、農業が破壊されてしまう」と訴えています。
ナタネ種子の開発者シュマイザーさんは、カナダ中西部の穀倉地帯、サスカチュワン州ブルーノで、妻と二人で六五十ヘクタールの農場にナタネ、コムギを栽培している農家。半世紀にわたって寒さや病気に強い、地域に適したナタネを育成し、保存、栽培している種子の開発者(シードデベロッパー)としても有名。 シュマイザーさんはまた、二十五年にわたって州議会議員、農業委員として農民の利益を守る仕事をしてきました。 しかし一九九八年のこと、モンサントはシュマイザーさんを特許権を侵害したとして告訴してきたのです。「モンサントは、私の農場で除草剤耐性ナタネ(ラウンドアップレディ・カノーラ)がライセンス料も支払わずに栽培されているのを発見した」というのがその理由です。
花粉で自然交配しても違法ところがシュマイザーさんは「それまでモンサントとは何の関わりもなく、GMナタネの種子を買ったことも、栽培したことも全くない」のです。この地方では冬強風が吹き、花粉は二十マイル(約三十二キロ)も広がるといわれ、風による花粉の交配が原因です。 訴訟が起こされた時、シュマイザーさんが最も心配したのは「私と妻が五十年かけて開発してきた種子が育てられなくなった」ことでした。そして「その責任はモンサントにある。モンサントこそ損害を賠償すべきだ」と申し立てたのです。 カナダでは、農民が毎年採った種子を播く権利を保障した連邦法「植物育種者権法」がありますが、裁判官は、農民の種子を守る権利よりも、モンサントの特許権が優先するとして、次のような判決を下しました。 (1)どんなGM作物であろうと畑に生えていれば、どのような方法で入り込んだかは問題でない(2)在来種を栽培する農家で、その作物が意に反してモンサントの遺伝子と交雑したとしても、その所有物・収穫物はすべてモンサントの物となる。 つまり、一九九八年のシュマイザーさんの農場の収穫物、利益はすべてモンサントのものであるというむごい判決です。 「このことは、いったんモンサントのGM遺伝子が農場に入り込めば、自分の種子を育てる権利を奪われ、有機農業が不可能になり、非GM作物を栽培している農家の収穫物までが奪われ、モンサントによって法廷に引きずり出されることになる」と言います。 カナダでは、先ごろマニトバ大学の研究者が、組み換えされていない認証登録のナタネ種子三十三検体をテストしたところ、一検体を除くすべてに汚染がみつかりました。「もうカナダには、GMに汚染されていないナタネや大豆はなくなった。GM遺伝子はいったん環境に放出されたら封じ込めはできないし、非GMとGMの共存はありえない」と、シュマイザーさんは強調しています。 (つづく)
(新聞「農民」2003.7.21付)
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[2003年7月]
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