「農民」記事データベース20030630-592-03

「改革か解体か」

第23回全国農協大会

協議案の問題点(1)


小泉政権・財界のシナリオに合わせた提案

 全国農協中央会は、本年十月十日に第23回JA全国大会を開催します。このため現在、大会協議案の討議が進められており、六月二十日にこれを集約、七月十七日の全中理事会で最終議案が決定されることになっています。

 農協の全国大会は、三年に一回開催されています。前回二〇〇〇年に開かれた第22回大会では、農協信用事業改革を重点とした「JA改革」方針が論議されました。翌〇一年には「農協改革二法」が制度化され、いわゆる「JAバンク自主ルール」が定められる根拠法とされました。農協信用事業の「破たん未然防止」のために、自己資本比率を国際金融を行う銀行なみの八%に定め、これに届かない組合には貸付制限を行ったり、事業譲渡を迫って、総合農協であることから排除するという弾圧法となりました。

 「米改革」と「農協改革」

 今回の大会では重点が農協の経済事業に移されます。米政策改革大綱とそれをふまえて改悪された食糧法に農協がどう対応するか、また武部前々農相の「改革か解体か」発言に象徴される小泉内閣と財界の要請に応える「農協改革」をどう実行するのかが主テーマとなっています。

 「米改革」と「農協改革」は、小泉内閣が進める「構造改革」農業版の重点であり、経済財政諮問会議と総合規制改革会議でも、大資本による農村市場支配の強化をねらっ

ており、「改革の工程表」スケジュールを含めて推進策が示されています。

 今回提起されている協議案は、これらの動向を背景にして提案されたものであり、組合員要求実現の方策でも、協同組合としての農協の組織・事業・経営の健全な発展をめざす方針でもありません。

 3つの協議案

 議案は、次の三つの文書に分かれています。

 一つは、「JAグループ米改革戦略」であり、これは、米政策改革大綱と改悪食糧法を受けての農協組織としての役割分担を明らかにするものです。「売れる米づくり」「担い手の明確化」を含めて「米改革」が示す「農業者・農業団体が(米流通の)主役となるシステムの構築」をどう進めるかを提案しています。

 二つ目は、「経済事業改革の指針」という文書で、信用事業に続いて「経済事業版の自主ルール」作りをねらっています。改革の対象は、購買・販売事業にとどまらず、営農指導への目標管理制度の導入やAコープ、給油所、農機・自動車センター、物流センターなど拠点型施設をもった事業の「外部化」(切り離し別会社化)などを具体的に提案し、これを「選択と集中」と呼んでいます。そして大幅削減した要員計画を含む個別農協の経済事業改善策は、十月の全国大会までに策定するとしています。

 三つ目の文書が「農と共生の世紀づくりをめざしてJA改革の断行」と題する協議案の本体で、さきの「米改革」「経済事業改革」を包含した方針案となっています。取り組みの基本姿勢を「信頼」「改革」「貢献」という三つの言葉で示し、米改革を含む地域農業の振興、経済事業改革とならんで「経営の健全性・高度化」「協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化」が重点実施事項とされています。

 以下、次号から各項目ごとに議案内容とその問題点を解明します。

(つづく)
(農民連参与山本 博史)

(新聞「農民」2003.6.30付)
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2003年6月

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