悪政はねのける国民総ぐるみの自給率向上運動を生産広げ、国民とのルート切りひらく全国ネット立ち上げへ産直協第15回総会「地域からもの作りを広げ、全国ネットの力で国民総ぐるみの自給率向上運動にとりくもう」――。産直運動全国協議会(産直協)は六月十二〜十三日、秋田県田沢湖町で第十五回総会を開きました。総会の最大の眼目は、「米改革」など農民を生産からしめ出す攻撃をはね返し、安心・安全の国内産を求める国民と結んで、生産を守る運動を前進させること。来年、農民連と産直協が共同でつくりあげる「農民連全国ふるさとネットワーク(仮称)」の基本的な方向や役割などのたたき台が提起されました。二十九道府県、百三十一人の参加者は、各地で積み上げてきた多彩な実践を交流。「全国ネット」で切り開く展望や組織のあり方を熱心に討論しました。
多彩な実践、展望を熱心に討論朝どり野菜の午後セリ総会では、朝どり野菜の午後セリにとりくむ秋田市中央市場「丸果」の高橋良治社長が記念講演しました。 「地域の風土や食文化に合った昔ながらの野菜づくりを取り戻そう」という朝どり野菜のとりくみは、稲作中心の秋田県農業が米価暴落などで衰退させられるなかで農業の再生と市場の生きる道を模索して始まりました。 毎朝六台のトラックが県内くまなく回り、農家の庭先を集荷。時には社長みずから膝づめで野菜作りを訴えることも。当初の「トラックの荷台でダンボールがおどる」状況から、扱い量は徐々に増え、勤めをやめて野菜づくりを始めた農家のお母ちゃんは「子どもが畑仕事を手伝ってくれるようになった」と、社長に喜びを語りました。 農民連がいま進めている運動にも多くの示唆を与えた高橋社長の講演。参加者は大きな拍手で共感をあらわしました。
“地域からもの作り”で元気に全国の英知ねり上げて続いて、産直協の中津孝司代表と椎名二郎事務局長代行が、総会議案と「全国ネット」の組織討議案を提案。椎名氏は、「日本列島三千キロをネットワークで結べばさらに大きな可能性が開かれる」と強調し、全国で進んでいる学校給食に国内産を供給する運動や地産地消のとりくみ、市場や流通業者との多様な提携などを紹介。 そのうえで、県ネット、ブロックネット、全国ネットの機能と役割を提案した椎名氏は「一年かけて実践的な運動と議論を積み重ねて、全国の英知でねりあげていこう」と訴えました。 地域でもの作りを広げ、全国ネットを生かして、安心・安全な国内産を望む大多数の国民に届ける運動は、政府が進める米・農業つぶしへの最大の反撃です。 真嶋良孝・農民連副会長は、国会審議の様子も紹介しながら、「米改革」・食糧法改悪を「動き出す前から、これほど破綻が明瞭な政策はない」と批判。「悪政に対抗する地域・全国の運動と全国ネット・準産直米のとりくみで、国民的な食糧自給率向上の運動をまき起こし、この攻撃を押し返そう」と呼びかけました。
どんどんと作り売って討論では、この間の多彩な実践とともに全国ネットで切り開く展望が大いに語られたのが特徴です。 佐久楽農倶楽部のとりくみを報告した長野県産直協の小林吉彦会長は「農家が作りたいもの、食べたいものをどんどん作って売っていく。そういうルートをネットワークを生かして作っていきたい」と発言。同事務局長の塩入幸枝さんも、県ネットのとりくみで「畑に足を運んで、作物を見て、農家の悩みを聞く。農民のもの作りへの意欲を引き出すことは、農民運動の重要な役割だと確信した」と述べました。 五月二十八日に有限会社を立ち上げた東海ネットの吉川利明さんは、市場や生協にジャガイモやタマネギ、ニンジンをリレー出荷している経験を報告。「法人化で社会的な信用をかち取り、さらに一気に飛躍したい」と抱負を語りました。 農民連・奈良産直センターの高砂樹史さんも、「学校給食への食材供給など、近畿の府県連が横のつながりで実践してきたことが、ネット立ち上げの力になる。冷涼な気候を生かして夏場に葉もの野菜を作る大和高原は“宝の山”。単組主体のとりくみで仲間を増やしたい」と力強く発言。 また、“インショップ”(店舗内の専用コーナー)を二十店舗に広げている和歌山・紀ノ川農協の松本和弘専務は、「店舗ごとに生産者の部会を作り、一人ひとりが個性を発揮しながら、力を合わせて品ぞろえをしてもらう。個性とチームワークがかみ合って、農家が元気になっている」と語りました。
壮大な運動意気高く討論のまとめで、中津代表は、「今は会員拡大の絶好のチャンスだ。販路を模索している大規模農家、生産組合にも足を運び、参加を呼びかけよう」と強調。そして「今ほど“競争から協同へ”というスローガンを実践する時はない。全国の仲間の力を結集して、全国ネットという壮大な運動に挑もう」と意気高く呼びかけました。
(新聞「農民」2003.6.30付)
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[2003年6月]
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