「農民」記事データベース20030623-591-06

ただいま挑戦中

田植えしながら米糖ペレット除草

長野・臼田町


中古ミキサーで自家製作

 天日で乾かす

 お田植間近のある日、大塚献三さんの小屋では、奥さんの昌子さん(元佐久病院看護婦)が米糠ペレットの作り方を友人に教えていました。建設業でもう使わなくなったコンクリート・ミキサーに米糠を入れ、五%の水を少しずつ加えながら均一になるまでミキサーを回します。昌子さんは「こんな仕事は冬にできるね、なんていっていたのですけど、結局今ごろになってしまったの」と笑っていました。握って固まるようになったら、それを器械に入れてペレットにします。

 大塚さんは朝作ったペレットを田んぼに運び天日で乾かしています。

 「去年から始めたんで、まだ試験期間中、未完成です」という大塚さん。田植機はみのる成苗(ポット苗)四条植え(三輪乗用)で、私のものとまったく同型でした。

 市販物に薬害

 米糠は意外に重く、若い人でも田に撒くのは大変です。粉のままでは風で流されて寄ってしまい均一になりません。大塚さんたち田植機を共同利用している仲間は、去年からそれをペレットにして田植機で撒く方法に挑戦しているのです。

 市販のペレットを買ったら薬害が出たという話もあります。「無洗米を作っているところで安く入手できる話もあるが見学に行っても中は見せない。何か薬品でも使っていれば、何のための無農薬栽培だかわからない」とは、一度買ったペレットで薬害を経験した荻原徳雄さんの話。

 田植機の後にはグランドソワーという施肥器を取り付けました。

 バランス大事

 仲間の鈴木彰さんが植え、加藤さんがアシスタントです。百メートルを往復すると苗を補給し、二回に一回は米糠ペレットも補給します。「多すぎたかな?」と、まだペレットの施肥量を加減しながらの試行錯誤(大塚さんの施用量は、鈴木さんの倍、十アールあたり九十キロ。もっとも除草に使う丸大豆の量は、鈴木さんの方が大塚さんより多いとのこと)。

 ライムソワーなど一般の施肥機もそうですが、ペレットの出る量と田植機の速度によって施用量が決まるので、そのバランスが大事です。事前に試してみるわけにもいかないので一層大変です。

 植えた稲の間に粒々が見えるのは米糠ペレットです。

 Iターン者も

 アシスタントの加藤さんは初対面でしたから、仕事の合間に自己紹介をしあいました。加藤さんは四十歳。去年一年、献三さんと彰さんの農業の見習いをし、今年奥さんと臼田町へ移住したばかりです。去年も今年も彼自身は収入がありません。奥さんが地域の製造業で働いて生計を支えているのだそうです。家族を抱えての農業未経験のIターンです。

 「動機は?」――「食べものの安全です」

 「よく奥さんが賛成しましたね?」――「そうですね」

 私は絶句してしまいました。仕事をしながらですから詳しいことは聞けませんが、眼鏡越しの澄んだ目に一面の青い田んばが映えているようでまぶしくてなりませんでした。   

(小林 節夫)

(新聞「農民」2003.6.23付)
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2003年6月

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