『きくまの民話と伝説』愛媛県菊間町愛媛県菊間町は人口が減り続けています。先祖から語り継がれてきた民話が消滅してしまうのではないかと心配です。民話や伝説を後世に語り継いでいけば、ふるさとを見直し、住んでいて幸せを感じることができると思います。地元の若田日出夫さんらが中心となってまとめた『きくまの民話と伝説』集の中から随時紹介します。
みような事はあるもんじゃのおぅ。「蛇(じゃ)谷にゃあ大けな蛇(へび)がおるけに近いいたらあかん。」ゆうて、じいちゃんやばあちゃんがいっつもゆうとった。 ある夏のむしあーつい日に、じいちゃんに弁当もっ て いきよると、足元の方から何やら声がするんで藪(やぶ)の蔭(かげ)からじんわりのぞいてみたんじゃ。ほたら、つるつるした岩の上い、可愛らしい娘がきれーな着物きて座っとって、何やら聞いたことない歌を唄い もって黄揚(つげ)の櫛(くし)で長あい髪をすいとるとこじゃた。 「何処 の娘か、あんまり見た 事ない娘じゃ。」と思たけんどあんまりきれーな娘じゃもんでへえさし見とれて唄に聞 き入っとった。その内に、何げなく目が合うたその拍子に、つい足がすべってしもたんじゃ。 「しもた!」思たけんど遅かった。ガサッと大けな音がしてしもて、娘の方い目ぇうつしたら、今まで髪をすいとった娘の姿がじ ゅんじゅんに、蛇の姿に変わっていったんじゃ。 どのぐらいたったろか!、ボーッと見とれとったんでよう覚えてないけんど、体がぜぇんぶ、頭までぜぇんぶ変わった時、岩の上にゃあ大けな蛇が一匹とぐろを巻いてジーッとこっちを見とった。二(ふた)あつに割れた真赤なべろを見ると、「飲みこまれやすまいか!」と思たら、弁当もっていくんも忘れて家(いえ)いとんで帰っとった。 それから後、見たもんはおらんようなけんど、ほいでもあの谷ぃ行くと、どっかにおる気ぃがしていかんわいや…今でも。
(新聞「農民」2003.6.16付)
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[2003年6月]
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