食品衛生法改正案国民の権利、国の責任の明記を参院厚生労働委・参考人質疑食品衛生法改正案を審議している参議院厚生労働委員会で、五月二十一日、参考人質疑が行われました。参考人として、農民連食品分析センター所長の石黒昌孝さん、弁護士の神山美智子さん、順天堂大学医学部教授の丸井英二さん、(社)日本食品衛生協会HACCP普及推進部部長の丸山務さんが出席し、意見を述べました。四人とも今回の改正案におおむね賛成しました。
石黒昌孝食品分析センター所長が陳述“食品安全チェックの強化を”石黒さんは、今回の改正案は安全を求める国民運動の大きな成果だと評価したうえで、「“国民の権利”や“国の責任”の明記などはまだ弱い。予防原則の立場に立って食品の安全を守ることが重要」と指摘。そのためにも国は食料自給率を向上させ、国民に安全な食料を供給する責任を果たすべきと述べました。とくに輸入食品の安全性については、農民連食品分析センターで冷凍野菜から残留農薬の違反を多数検出したことなどをあげ、「国が責任をもって水際での検疫チェックを強化し、登録民間検査機関まかせにすべきでない」と強調。検疫所の体制についても「大幅に人員を拡充し、モニタリング制度や計画輸入制度などを改め、厳しい検査体制づくりが重要だ」と述べました。 また、今法案に盛り込まれた残留農薬のポジティブリスト制(基準のない農薬を使用した食品は流通禁止になる)を大きく評価し、「新しい基準値設定の際には外圧に屈せず、厳しい基準設定を」と強調しました。 他に、O―157などの感染症の侵入、抗生物質やホルモン剤など問題の多い食肉の安全性検査を強化すること、加工品やファストフードも含めすべての食品に材料と原産国、遺伝子組み換えかどうか、添加物、製造年月日などの義務表示を求めました。 二十一年前に東京弁護士会で食品安全基本法制定の提言を作成した際に中心的な役割を果たし、長年消費者運動に取り組んできた神山弁護士は、「(今回の改正案は)長年の消費者の運動がようやく成果とし て結ば れた」と高く評価する一方、「しかし消費者の意見が出せるだけでなく、出された要望には国は応えなければならないという“国民の権利”の明記がないと、画龍点晴を欠くものになる」と、消費者の権利の確立を強く求めました。 食中毒菌の研究者でもある丸山さんは「事業者責務が明記されたことを高く評価する。これをフードチェーン(生産から流通・消費のつながり)の透明性につなげることが重要だ。日本は輸入量が膨大であるだけでなく、加工・調理されて入ってくることが検疫・検査を難しくしている」と述べました。 医師の丸井さんは「リスクコミュニケーションが盛り込まれ、物のマネジメントから、物と人のマネジメントに踏み出した」と改正案を高く評価しました。
(新聞「農民」2003.6.16付)
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[2003年6月]
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