「農民」記事データベース20030616-590-01

食糧法改悪案

破綻必至の米改革押しつけるな

たたかいはこれから

 減反拡大と大赤字の米価を押し付ける食糧法改悪案が六月五日、衆議院で自民・公明など与党の賛成で可決されました。四日の衆院農水委員会では、民主党と社民党が提案した野党案と、与党案を同時に審議。野党案は、一兆円規模の所得補償制度を創設するほか、備蓄米数量を増やし、市場に影響を与えない棚上げ備蓄とするなどの内容。日本共産党も賛成しましたが、否決されました。


衆院で自・公与党が可決

野党案に共産党賛成

 改悪法案には米価下落の歯止め策が一切ありません。日本共産党の中林よし子議員は、「市場原理では米価下落の歯止めがない。大資本による流通への参入が可能となれば、米が投機の対象とされ、買い占めの恐れもある」と法案の問題点をズバリ指摘しました。

 また「米が野菜と同じになるが、米価下落の歯止めはあるのか」という自由党の山田正彦議員の質問に対して、亀井善之農水大臣は「価格は市場で決まるが、下がれば要件が合う人に補てんする」と答弁。しかし挙げたのは、稲経を改悪する米価下落影響緩和対策と、一俵三千円の過剰米短期融資制度。これでは米価下落を緩和するどころか、まったく逆の下落“誘導”措置と言わざるをえません。

 さらに、中林議員は、「地域農業から九割の農民を締め出し、これまで営々と稲作農業を営んできた農家を切り捨てる政策は許されない」と追及。そのうえで、百ヘクタールの農地で米を作る農業生産法人の社長が「米価がこれ以上、下がればお手上げだ」と言っていることを紹介し、「“担い手育成”は絵に描いたモチであり、破綻は明らかだ」と批判しました。 

 二〇一〇年までに農業の担い手を四十万戸にリストラする農水省の「農業構造の展望」については、生産調整研究会の生源寺真一座長も、委員会の参考人質疑で「かなり厳しい」と発言しています。 

 政府の無責任浮きぼりに

 質疑を通じて、政府・与党側の無責任さ、自信のなさと、野党の健闘が浮きぼりになったことも特徴でした。

 たとえば、自民党の金田英行議員が「野党案は消費量を超える余剰米を市場価格の六割で買い入れると言っているが、これでは米価下落につながるではないか」と難クセ。民主党の筒井信隆議員が「六十キロ三千円の激安価格で余剰米を処理させる与党案こそ下落誘導だ」と切り返し、逆に与党案の欠陥が露呈しました。

 また、石原葵食糧庁長官は威勢良く農家の「意識改革」を強調。失政の責任を農家に押し付けようとする一方で、ミニマムアクセス米削減は、アメリカの圧力を恐れてこれを拒否。弱腰で投げやりな官僚答弁でゴマ化しました。

 亀井大臣にいたっては、官僚作成文の棒読みで、途中、読む場所を見失って発言に窮し、あわてて三人の官僚が群がる始末。さらに北村直人副大臣が、中林議員の質問中に閣僚席からヤジを飛ばし、委員長からたしなめられる場面までありました。

 食糧法改悪案はまだ参議院でのたたかいが残っています。たとえ法案が成立したとしても、予算措置はこれから、市町村や集落における周知徹底と具体化もこれからです。今こそ、農民と米流通業者、米パニックにさらされる消費者が手をつないで、米改革を許さない運動を共同して広げる時です。

(新聞「農民」2003.6.16付)
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2003年6月

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