「農民」記事データベース20030602-588-08

日本母親大会 おざってたんせ

土地は基地のためでなく作物をつくるためにある

 「生命(いのち)を生みだす母親は 生命を育て 生命を守ることをのぞみます」をスローガンに、半世紀の歴史を積み重ねてきた日本母親大会。今年は、八月二〜三日、秋田で開かれます。実行委員長を務める木村康子さんに、今年の大会の魅力や母親大会にかける思いを聞きました。


今年は秋田 大会の魅力は?

木村康子実行委員長に聞く

 今年は第四十九回日本母親大会です。東北では五回開いていますが、秋田は初めてです。毎年、真夏の暑い盛りに、一日一万人規模で開かれる母親大会ですが、自然が豊かで、お米も、お魚もおいしい秋田に、ぜひたくさんの女性に来てほしいですね。

 記念講演は、川端純四郎さんです。川端さんはクリスチャンで、東北を中心に、平和、文化、市民運動でご活躍されています。きっと有意義な講演になると思います。

 今世紀早々、アフガン、イラクと二つの戦争があって、誰もが「子どもたちが希望の持てる二十一世紀を」と願っているのに、日本では有事法制などで不安です。平和、暮らし、子どもと教育などのテーマで多くのお母さんたちと話し合いたいと思っています。

 秋田が生んだ小林多喜二

 それから「秋田に来てよかったな」と思っていただける特別企画もたくさん準備しています。

 まず第一に「秋田が生んだプロレタリア作家―小林多喜二と松田解子」。小林多喜二と松田解子さんが同世代だってこと、ご存知でしたか? 松田さんは九十八歳というご高齢ですが、「這ってでもいきます」とおっしゃっています。

 秋田は、とても文化度が高いところです。古くから港町として栄えた秋田市の土崎は、日本で最初のプロレタリア思想誌『種蒔く人』が発行されたところです。

 土崎はまた、敗戦の夜、八月十四日に空襲を受けました。また、花岡鉱山は、強制連行された中国人が過酷な労働でたくさん殺されたところです。そうした秋田の歴史、戦争の傷跡を学ぶのが、二つめの企画です。

 三つめは、世界遺産の白神山地。熱い戦争ももちろんいやですが、二十一世紀は水戦争の時代ともいわれています。ブナ林と水の関係について勉強します。

 四つめは「ガッコ自慢集まれ」。秋田では漬物全般をガッコというのね。雪に閉ざされた長い冬の間、干してしなしなになったダイコンを囲炉裏(いろり)の上に張った網に載せていぶったのが「いぶりガッコ」の元祖だそうです。

 母親大会を開く前に私たちは今年も、「母親キャラバン」といって開催県の市町村をすべて訪問しました。そのなかで、地場産品で町おこし、村おこしにがんばっている話がたくさん出されました。そうしたものを持ち寄って自慢しあってもらいたい、味わってもらいたい、全国に発信したいと思っています。

 五つめは「東北弁で語ろう、東北民謡をうたって踊ろう」。秋田出身の女優さん、浅利香津代さんの秋田訛りの朗読や、現地の方の秋田民謡で踊りも習います。

 お弁当は「あきたこまち」

 「母親キャラバン」では、秋田県の寺田典城知事にもお会いし、後援もいただきました。「一番の悩みは」とお聞きしたら、「人が減ること」とのこと。「とにかくここに住み、ここで子どもを生み育ててほしい」、切実な思いが伝わってきました。

 キャラバンでも一番出るのは、高齢化、少子化の悩みです。近年、学級が四十クラス分も減ったそうでたいへんなことです。

 それと地域経済ですね。やはり秋田の経済の中心はお米。それから秋田杉、林業ですが、輸入に押されています。地域に根ざした産業に政治が目を向けていません。

 私たちはそこに行ったら、そこのお米を大事にしています。母親大会の二万食近くのお弁当はすべて「あきたこまち」で作っていただきます。お弁当は、お米がおいしければ「おいしかったわ」と、みなさん言ってくれるのね。

 いつも満員の農業分科会

 私は、母親大会実行委員会にくる前、証券会社に勤める普通のOLでした。でも、「社会的なことをしたいな」と思っていたとき母親大会と出会い、それから四十年以上、長い道のりのなかで農民連さんとも知り合いました。

 一九五五年に始まった日本母親大会は、五九年に「農家の暮らし」というテーマで初めて農村の問題をとりあげています。その後、ずっと農業の問題をとりあげています。お米の自由化が問題になって分科会に参加者があふれるようになり、最近は「食料と農業、安全な食べもの」といったテーマで毎回満員です。

 もっともっと農業、農山村の問題を、社会がとりあげてほしいです。「農業は国の基本」という哲学が問われていますね。

 私は今、大会準備で秋田通いですが、減反の田んぼが草ぼうぼうだったり、車のスクラップがドーンと山のように積まれていたりすると体が痛くなります。地面が泣いているって、そんな感じがするんです。

 今は「ものを作るな」という農政ですが、戦争中は「増産、増産」だったんですよ。私は、東京生まれの東京育ちだから疎開のときしか知りませんが、食べものを作っている農家も満足に食べられなかった。強制的に供出させられたのです。

 「作れ、作れ」のときに満足に食べられなくて、今は「作るな、作るな」「外国から買ってきたものを食べろ」――こういうのっておかしい。農家と一緒に、もっと声を上げなければと思います。

 それから農業や漁業、林業をやっている人は哲学者だし、ロマンチストが多いですね。自然のなかで、体を使って仕事をしている人はやっぱりすごいなって思います。農業などの第一次産業や自然が、人の心や文化、そういうものをひっくるめて人が生きる環境を守っていると思います。

 母親大会の原点は「平和」

 私は、身近な暮らしから日本の経済、政治のあり様を見て、それが世界とどうつながっているのか、語り合えるのが母親大会だと思っています。

 小児マヒ生ワクチンや保育所づくり、高校全入、学力の問題など子どものこと、高齢者や介護の問題も、分科会で早くから話し合ってきました。

 今は、不況やシャッター通りの問題から、産廃やゴミの問題まで、そういうことを話し合いながら「みんなで地域を守っていく」ことが大事です。そういう気持ちが自民党政治によって壊されていると思います。

 それにしても、すべての基本は「平和」、そしてそれが母親大会の原点です。「土地は基地にするためではなく、作物をつくるためにある」、そんな思いを秋田でいっぱい話し合いましょう。

(写真)関 次男〈写真はありません〉


 きむら やすこ 一九三五年、東京生まれ。東京都立富士高校卒業後、証券会社に勤める。一九六〇年、日本母親大会事務局に勤務。一九九七年から日本母親大会実行委員長。自治体問題研究所副理事長。日本民主主義文学同盟準同盟員。著書に、『いのちのうた響かせながら―母親大会ものがたり』『働く婦人と保育所』(共著)『やさしい憲法をおかあさんへ』(同)。


第49回日本母親大会in秋田
全体会 8月2日(土)12:30〜17:00
   秋田スカイドーム(秋田市)
分科会 8月3日(日)10:00〜15:30
   秋田経法大学(秋田市)他

(新聞「農民」2003.6.2付)
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2003年6月

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